町田 コラム
公開日:2023.08.24
宮司の徒然 其の131町田天満宮 宮司 池田泉
空木
パソコンで「けいたい」と打ち込むと「【携帯電話】」というマークに変換されたりする。もはや携帯イコール携帯電話となっているが、「携帯」は何かを携える言葉で、薬を携帯するとか、定期入れを携帯するとか、概ね小型の物を持つ場合に用いられる。携帯灰皿は略して「携帯」にならなかったが、携帯電話は「携帯」になった。明らかに国民が持つ圧倒的な数の勝利だ。しかし「携帯持ってる?」は「携帯を携帯してる?」になるから、略すというのもどうなのだろう? 略号にしても、昔は等々の意味で文末に付けた「etc......」だったが、現在「ETC」といえば有料道路の料金を自動で支払うシステムのこと。略すことで言葉が壊れていかないか不安になる。
梅雨の前、谷に白いウツギがたくさん花をつけて重そうにしている。そんな折、冷たい雨が降れば花に水滴がついて、枯れてしまったかのようにうなだれる。これを"卯の花くたし"と呼び、季語にもなっている。ヤマウツギやタニウツギの「ウツギ」は「空木」と表す。茎が中空だからだ。ところが、エボダイ、ニザダイなど鯛の仲間ではない「○○鯛」が多いように、ハコネウツギやベニウツギ、ガクウツギなどは、本来のウツギと違って茎は中空ではないから、「空木」の字を当てるのは疑問だ。おそらく遠目に見た感じが似ているからウツギとされたのだろうが、分類としても明らかに違い、ガクウツギに至ってはどう見てもアジサイの仲間だ。
現在、NHKの朝ドラでは「植物の命名」が物語の軸になっているが、植物のみならず万物は、人間が区別するために名前が付けられている。人と人とがコミュニケーションをとるため、文字として残すため、必要不可欠なものではあるが、言葉も文字もない植物にとってみれば知ったことではない。とにもかくにも、過去は仕方がないが未来に向けては、物や現象に名前をつけることや、略語や略号、造語の作り方にも慎重であってほしい。美しい言語を遺すためにも。
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