町田 コラム
公開日:2023.09.07
宮司の徒然 其の132町田天満宮 宮司 池田泉
マツオウジ
地球規模の盛夏。老木となり朽ちゆくばかりの樹木「マイバシイ」に、突然白っぽいキノコがたくさん吹き出した。シイタケやヒラタケと同じく、弱っている木から発生する木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)として分類され、本体は樹皮と幹の間に張り巡らす菌糸で、外に出てくるいわゆるキノコと呼ぶ部分は、胞子を放つための子実体だ。つまり子実体を取っても本体は樹皮の裏で生きているから、木に養分がある限りは来年も発生することになる。ただし木が死んでしまったらそのキノコも生きられない。だから子孫を増やすために子実体を外に出して胞子を飛ばす。シイタケやヒラタケ、エノキタケ、ナメコタケなど、人間はそれを利用して食用としている。
食べてみた
今回「マイバシイ」に発生したのは「マツオウジ」だ。なかなか出会えない食用キノコで、私も初めてだった。辞書には『食べれるが発生数が少ないから食用に適さず、人によっては胃腸に中毒症状を起こすこともある』と書いてあったが、私はとりあえず食べた。一度しっかり湯がいてから、醤油と酒、みりんで煮込んでみたら、弾力は出たものの硬いゴムのようで噛み切れないほど。調理法を間違えたかもしれない。ただし、強烈なキノコ臭がするから、良い出汁はとれそうだ。いくつか飲み込んだが胃腸は問題なしだった。
隠れて広がる
食料輸出協定を停止し、航行する民間船舶にも攻撃するとして、黒海に機雷を置いた某大国。これにより歴史的危機に陥る食糧難のアフリカ諸国にじわじわ侵入し、地位を確保していく隣国。中露同盟に取り入って孤立を逃れるロケットマン。見えそうで見えない利害関係は、まるで樹皮に隠れて広がる菌糸。沸騰とも言われる地球の健康状態はよろしくない。今のうちに幹を治療してバランスをとっておかないと、考えたくないが、緑の大地に大きなキノコ雲が発生するかもしれない。
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