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町田 コラム

公開日:2025.03.06

町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の147

  • 蝶の羽重ね

優先すべきは

 当社境内には10種類ほどの梅がある。それぞれに一重だったり八重だったり、白やピンク、赤。枝が上に向くもの、垂れ下がるもの。皆個性豊かだ。そして品種として特定できない実生(みしょう)の梅は、花に他の梅の花粉がついてできた実から発芽した梅。つまりミックスだ。これはこれで親株の性格と受粉した梅の性格を併せ持った個性を発揮する。

 いろいろ調べ上げて「蝶の羽重ね」ではないかと特定した一株。均整のとれた中輪の八重咲きで、淡いピンクが似合う。わりと早咲きだから二月中旬を過ぎると、花の蜜をついばむメジロなどがせわしく枝を渡り、花びらがはらはらと舞う。桜吹雪同様に風情とみる向きもあるが、私は花の終わりが近いことを感じて寂しく思う。蝶の羽重ねは実をつけない。これは人間がやってしまった大きなミスだ。花を楽しむだけの目的で作られた品種には、実をつけないものもできる。八重咲きの梅にはその傾向が強い。日本人を大いに盛り上げる桜のソメイヨシノも、小さな実をたくさんつけるが発芽しない。花を咲かせる目的は、実となって発芽して若木を育むこと。これこそ最優先であって、人間に花を楽しんでもらうためではない。わかっているが私も梅を眺めて春遠からじと穏やかな気持ちでいられる自分がいて、紛争状態にある国々の人たちを対比する。こんな心持ちこそ、平和な日本にいるからこそ持てるのであって、いつミサイルが飛んでくるかわからない日常だったら、果たしてどのように対比するのだろう。ウクライナで生まれて3歳になる子どもは、生まれた時から国は戦地。ウクライナだけではない。ロシアでも少年少女に軍事教育が始まっている。かつての日本の不幸な歴史と同じだ。教育課程に殺人と破壊が組み込まれるという恐怖。教育の優先順位で、道徳と戦争が逆転しつつある国。

 梅やバラ、ロウバイや石楠花などは花粉による自然交配でミックスされていくスピードが速いと言われる。若者がわりと気軽に海外へ行く時代になっている。もっと国際交流を進めて、人類もいずれみんなミックスされれば、今ほど争うことはなくなる思うが、そのためには争ってないで地球環境を戻して、地球を長生きさせなくてはと、一般庶民の私ですら思うのだが、ことに偉い方々は優先順位を守れない。

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