先月行われたリオ五輪の柔道女子52キロ級で銅メダルを獲得した東浅川町出身の中村美里さん(27)。2008年の北京五輪で平成生まれ初の五輪メダリストとなって以来、日本柔道女子のエースとして活躍し続けた中村さんを、父・一夫さん(53)、母・美智代さん(50)が見守り続けてきた。
「本人が望む金メダルを取らせてやりたかったですね」――。幼い頃から、美智代さんと共に、中村さんの試合会場に足を運んできた一夫さん。リオ五輪も中村さんの全試合を美智代さんと観戦し、娘の銅メダル獲得に誇らしい気持ちになる一方、本人の心境を考えると複雑な思いだったという。
学生時代は陸上競技の長距離選手だった一夫さん。そのため、柔道は専門外だが、幼い頃から、中村さんの試合を観戦した後には、感想や良かった点、改善した方が良いと感じたことをメールなどで、中村さんに伝え続けてきた。「美里のために少しでも力になりたいと思って。でも、命令口調ではなく、本人がやる気になるようなアドバイスを送ってきました」。自身の競技者時代などを振り返り、どのようなアドバイスであれば受け入れやすく、モチベーションを上げることができるのかを考えながら、助言を送ってきたという。
北京五輪前には、中村さんにサッカーボールを手渡し、リフティングなどをすることで、足を「思うようにつかえる」状態にすることを勧めた。
「美里の武器である足技の強化につながるように、『やってみたら』と助言しました。今では、リフティングが何百回もできるそうです」。専門家ではない視点が、中村さんの強さを後押しした。
「成長感じた」
中村さんの柔道家としての姿を長年見守ってきた一夫さんの目に映ったリオ五輪での中村さんは、これまでの五輪と比べてリラックスして試合に挑めているように見えたという。「成長を感じられた。前回のロンドン五輪後に足を手術し約2年間リハビリに費やしたことが生きていると思う」と目を細める。
その期間、リハビリ施設などで、復帰を目指しリハビリメニューに取り組む一方で、サッカーや格闘技など他競技の選手らと中村さんが交流したことが、視野を広げることにつながったのではないかと一夫さんは見ている。「ロンドン五輪の時は、『生活の全てが柔道』という感じでピリピリしていて初戦で敗退した。今回は力を出し切れたのでは」
美智代さんは「入院中に同部屋だった中学生や私たちと同世代の方などとも、今でも連絡を取り合っているよう。皆さんに仲良くしてもらっているようでうれしい」と笑顔。最近では、”他競技”の友だちを自宅に連れてくることが増えたという。
今後は未定
8月下旬に所属先で行われた「五輪報告会」で、中村さんは今後について未定とした。
柔道を続けるにしても、新たな道を選ぶにしろ、2人は中村さんに「自分の好きな道」をゆっくりと選んで進んでもらいたいと考えている。「無駄なことが嫌いな子ですから、選んだ道を精一杯歩んでくれると思います」
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