市役所や市民センターでの傘の貸し出しをはじめ、親切な行動等に対する表彰を毎年行う団体「八王子親切会」が今春、設立60周年の記念誌を発行した。事務局の市協働推進課・青柳志良課長は「目立つような功績でなくても、地道な活動が報われる場を提供し続けている」と意義を話す。
1961年に発足し、節目の年を昨年迎えた同会。会長を八王子市長が歴代務め、38人の役員が名を連ねる。
発足したのは、東京オリンピックが開催される3年前。記念誌によると「地理に不案内で言葉がわからない外国人選手をいたわり、オリンピックという歴史的な競技を最高の環境の中で実施させよう」という思いがあったという。オリンピック開催の1964年は、八王子市が「親切都市」を宣言した年でもあった。
今も続く活動の「親切傘」は、突然の雨で困っている人に利用してもらおうと、発足の翌年から設置。同会は60年間で2万本以上の親切傘を提供しており、現在では市民から提供された傘や忘れ物を再利用した「リサイクル親切傘」も導入している。さらに「社会の中で埋もれている親切に感謝しよう」との考えで、「親切表彰」を毎年実施。年間で20前後の個人と団体が表彰されている。「広報はちおうじ」を通じて、毎年6月に推薦を募集している。
「押し付けない親切」
市内に住み、元大学職員で唯一の賛助会員である海老澤信一さん(59)は「突然の雨で親切傘に助けられたことがあった」と振り返る。「困ったときの傘はありがたい。そんなときに感じた気持ちから醸し出され、根づいていくものが親切なんだと思う」
60年前、オリンピックを前に「親切」を意識した当時の人たちの思いが、さらに次世代へつながっていくことに期待を込める。「会の活動としては地味かもしれない。それでも『何かをしましょう』と押し付けない感じがいい」。来年で60歳になる海老澤さんにとって、会の歴史は八王子のまちが移り変わってきた年月とも重なる。「まさに同じ時代を生きていると感じる」と思いを話す。
記念誌は市本庁舎7階の協働推進課のほか、各事務所や市民センター、図書館で閲覧することができる。
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