地域の安全、ワンチームで

　○…署員数日本一を誇る八王子消防署の第39代署長。経験と日々の研鑽（けんさん）がものを言う消防の世界は、職人に近い--。思いを込め、初訓示では「消防業務のプロとして技を極め、署員ワンチームで管内の安全安心を守っていこう」と署員約４６０人に呼びかけた。コロナ禍で地域のつながりが薄れていることを憂い「今年は関東大震災から１００年目でもある。『地域とともに』をモットーに、関係機関と協力しながら地域防災力を高めていきたい」と誓う。

　○…生まれは千葉県松戸市。祖父は警察官、父は都の職員という公務員の家系で育ち、自然と「世の中の役に立つ仕事をしたい」と思うようになった。消防を志したのは高校生の時、昭和史に残るホテルニュージャパン火災の報道で目にした、消防士たちの勇敢な姿に感銘を受けた。東京消防庁の門を叩き、都内のさまざまな現場を経験。阪神・淡路大震災の際は本庁で震災対策に携わり、被害状況を調査して防災まちづくりを提案。ハイパーレスキューの創設にも関わった。

　○…消防大学校の教授や本庁で人事を務めた時期もあり、業務説明会で八王子の大学を訪れたことも。大切にしていることは、現場の安全管理。尊敬していた先輩が殉職したつらい経験から、「自分の安全を確保してはじめて、消防活動や人命救助を行うことができる」という意識を持つことを後進に説いてきた。

　○…家族と離れ、公舎で単身赴任。特殊な仕事を理解し、家庭を守り支えてくれる妻に感謝する。体力の維持と「管内をなるべく自分の目で見ておぼえたい」という思いから、出勤前のランニングを10年近く続けている。着任直後の多忙さで趣味の温泉と映画はぐっと我慢。「時間が取れたら再開したい」