あつぎ郷土博物館に、70年代ごろの丹沢湖の三保ダム(山北町)の建設や相模線の風景を収めた8ミリフィルムなどが寄贈された。貴重な動画を撮ったのは、故・代田則高さん(棚沢)。「地元の博物館に協力したい」と、昨年12月に80歳で他界する前に寄贈していた。同館ではこれから整理し、劣化防止などの対策をした上で上映などを目指している。
代田さんは若い頃に趣味で8ミリ撮影を始め、当時暮らしていた川崎市の祭りや運動会などを撮っていた。50年ほど前に赤井光夫さん(海老名市)ら友人と相模線をテーマにしたドキュメンタリー制作に取り掛かり、国鉄とも交渉しながら1本の作品を完成させた。
ダムの建設を知ったのはこの頃。車に機材を積んで山北に通うようになった。映像は引っ越してゆく人や水没する予定の集落、抗議活動をする住民、工事の進捗などを収めている。
撮影に同行したのが長女の雅子さん(55)だ。「撮影当初は抗議活動中の方から『(撮っても)無意味だからどけ』などと怒られた事もありましたが、通ううち『ちゃんと撮って』という声に変わり、お茶を振舞われるようになった」。年配の女性から、山菜を手渡され「ここで採れるのは最後だから味わって食べて」と涙していた事が忘れられない。代田さんは自宅に現像用の暗室も備え、動画と音声を組み合わせる編集にも没頭し、本格的なドキュメンタリーに仕上げた。
気軽に撮り、ネットで公開できる昨今について、代田さんは「便利なせいで人と人とのふれあいが減った」とこぼしていた。一方でユーチューブに公開中の動画「相模線」は5万回再生され、コメント欄には感謝の言葉が連なっている。
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