横須賀美術館で開催中の企画展に出品している彫刻家 土屋仁応(よしまさ)さん 横須賀市出身 34歳
自分の表現を木に託し
○…今にも動き出しそうな存在感、ぐっと引き込まれる瞳、柔らかな肌―。作品が独自の空気感と時の流れを持っているような、不思議な感覚を覚える。28日まで横須賀美術館で開催中の「おもしろ動物展」に麒麟・羊・子犬・ユニコーンの木彫作品を出品。本の装丁や雑誌で取り上げられるなど、国内アートシーンで注目の彫刻家だ。
○…「そこに居る感じを大切にしている」。木の質感を生かし、体温を感じさせる。象徴的なのは瞳だ。大学院で文化財保存学を専攻、そこで仏像の世界に出会った。仏像に眼を入れる技法や素材に加え、「見ればその世界が分かる」という圧倒的な存在感に影響を受けた。実在の動物や想像上の生き物など、作品のモチーフは様々だが、頭の中にある数多くのイメージから「演出家になって登場させるのが僕の役割」と話す。
○…「幼稚園の卒業文集に『彫刻家になりたい』と書いていたんです」。思えば、絵や粘土を楽しむ一方、魚を飼ったり、草花を採るのが好きな子どもだった。「彫刻家なら好きなことを両方できると思ったんでしょうね」。追浜高校進学後、美術の予備校で自分の手に馴染んだのは、やはり彫刻だった。動物‐木彫という今のスタイルに落ち着いたのは、東京藝術大学に入ってから。だが90年代、「アート」の価値観や概念が多様になった。自分もアートに対して迷いを感じていた。だからこそ、幼少時代に感じたような、シンプルで具象的な作品で表現したい、という気持ちが強くなった。「いろんなものを作ってみたいという思いは、その頃から変わっていない」。
○…現在はアトリエを埼玉県に構え、犬や猫と暮らす。「この美術館は憧れの場所。(出品は)ご褒美だと思う反面、次も頑張れという叱咤激励かも」。来年は、個展や作品集の出版が控える。忙しさを感じさせない佇まいと言葉に込められた意思は、どこか作品に通じているようだった。
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