「アナログの魅力感じて」 ”活版”技術守り50年
平成町にある伊東印刷所では、全国でも珍しい「活版印刷」での年賀状作りが佳境を迎えている。
活版印刷とは、一文字ずつ金属でできた印鑑のような「活字」を組み合わせたものに紙を押し付け印刷する手法。一見するとプリンターで印刷したものと差異がないが、間近で見ると紙にわずかに凹凸が見られる。多色刷りに強いオフセット印刷が台頭したことで、急速に姿を消しつつある活版印刷だが、独特の手触りや”アナログ感”を好むファンも多く、いまだに名刺や年賀状の注文が後を絶たないという。
「活版で印刷した字にはずっしりとした『重み』があるんですよ」。そう魅力を話すのは、同印刷所の林俊明さん(68)。この道50年、活版印刷機を操作できる市内でも数少ない職人の一人だ。一番小さい活字は一辺が2㎜にも満たない。注文通りの図柄になるよう、時には虫メガネを使い、数十万本以上の活字の中から一つずつ選んでいく。
パソコンを使った手軽な操作とは違い、活版はその都度活字の組み直しが必要となる。今でこそ15分もあれば大抵のレイアウトを組むことができる林さんだが、修行時代は試し刷りと組み直しの連続だった。特に名刺はその人の「顔」。数ミリの行間の違いが持ち主の印象を左右してしまうこともあるという。また活字は鉛製なので、長年使っていると四隅がすり減り、インクがうまく印字されなくなる。「1番減りが早いのは『番』かな」。1枚目と1000枚目で仕上がりが変わらないよう、寿命の見極めには職人の腕が試される。
かつては全盛だった活版印刷も今や「市内にウチを含め2軒だけ」。時代の移り変わりを受け止めつつ、注文が続く限り今日も活版印刷機を回し続ける。
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