久里浜地域の支援を受けて活動を始めた市民楽団の団長を務める 高橋 広明さん 日の出町在住 56歳
情熱のタクト まちに振る
○…地域運営協議会や商店会の協力を受ける形で活動を展開し始めた「黒船吹奏楽団」。コミセンが練習拠点として利用でき、商店街のアーケードが演奏場所となるなど地域からの支援は手厚い。「街角コンサートなどを企画して久里浜を音楽が溢れる街にしていけたら」。団を率いる者として地域の期待に応えたい熱い思いがある。
○…今は大矢部小の教頭。それまでは市内6つの中学で理科の担当として教壇に立っていた。教員の間で「高橋先生」は吹奏楽部の名指導者として名を馳せている。在任校を県や関東など大舞台に幾度となく導いてきた実績からだ。その中でも部の立ち上げの際に呼ばれた久里浜中の印象は強く残っている。たった4人での出発はまず部員集めから。人が増えると次は楽器不足に。そこで手を貸してくれたのが「まち」だった。商店街の募金活動や住民から中古品の寄贈。「地域の協力は本当に嬉しかった」。市民楽団の拠点を久里浜に選んだのもこのエピソード抜きには語れない。
○…指導者人生は挫折からスタートした。初めて顧問に就いた浦賀中では生徒と意思疎通が上手くいかず、指揮は無視された。中途半端な顧問の姿勢や未熟な技術ではやる気に満ちた生徒の信頼を得られなかった。「プライドを捨て、がむしゃらに」。終業後や休日に指揮のレッスン通い。ただ棒を振っているように見えた指揮者は奥深かった。1つの4拍子の中にも「堅さや柔らかさ」があることを知った。「ダメな指揮者では有能な音楽をもダメにする」―。演奏者を支える指揮者の心得にしている。
○…先日行われた黒船吹奏楽団の体験会には地元を中心に多くの小学生が訪れた。初めてトランペットに触れ目を輝かせる光景を見て思わず頬が緩む。団員は子どもから高齢者まで幅広く、実力もバラバラ。船出したばかりの新生市民楽団の音色を歴戦のタクトを振るいながら街に響かせる。
|
<PR>
|
|
|
|
|
|