富士山を信仰の対象とする「富士講」。先達と呼ばれるリーダーの導きで富士登拝を行う古くからの習俗だが、三浦半島でも4年前まで北下浦地区にある三浦富士を富士山に見立てて登拝する神事が行われていた。これの中心的な役割を担っていた斎藤義次さんに富士講の活動と意義を聞く市民講座が今月11日、北下浦コミュニティセンターで開かれた。
長沢在住の斎藤さんは昭和5年生まれの89歳。三浦半島でたったひとりとなった先達である。先達は富士山で修行を積んだ行者であり、「講」(こう)と呼ばれる集団を統制、富士登拝の際は導者となる。斎藤さんはこれまで45回の富士登拝を経験しており、国内でも数人しかいない「大先達」として尊敬されている。富士山の世界遺産登録にも関わっており、審査機関のイコモスが現地調査を行った際に「お焚き上げ」と呼ばれる護摩焚きの神事を披露したという。
今回の講座で、斎藤さんは先達の行衣(ぎょうい)の白装束を身に纏って登場。先達に与えられる「御身抜」(おみぬき)の軸装巻物を披露した。
三浦富士は、大漁祈願や海上安全を祈願する信仰の山であり、毎年7月8日の山開きに三浦半島一帯の「富士講」がこの山をめざして参集した。ただ、先達の高齢化や人員の減少を理由に現在、山頂での「お焚き上げ」は行われていない。先達の後継者も不在で、山田敏男総代長は「残したい文化。なんとか復活させたい気持ちはある」と話した。
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