早稲田大学名誉教授で文学博士の中野幸一さん(83)=逗子=がこのほど、古典文学の傑作として知られる源氏物語を現代語訳した「正訳源氏物語 本文対照」を出版した。長年にわたる研究の集大成として、およそ3年間かけて執筆。原文を忠実に訳し、訳文との読み比べができるよう構成にも工夫を凝らした。
このほど刊行された第1冊には、源氏の生い立ちが描かれている「桐壷」から若き日の紫の上との出会いが綴られている「若紫」までを収録。以降1カ月おきに1冊ずつ刊行し、54帖を全10冊にまとめる。
大学在任中から構想を温めていたという中野さん。「源氏物語は『物語』ですから、一貫して語りの姿勢で描かれています。文調一つにしても『である調』よりも『ですます調』の方が日本語としては自然。紫式部の書いた本文(ほんもん)を出来るだけ尊重して、改めて訳したかった」と話す。これまで現代語訳は谷崎潤一郎や円地文子ら多くの作家も手掛けているが、自身は研究者として、いかに原文の呼吸を現代文に再現するかにこだわったという。
喜寿を迎えたのを機に翻訳作業を始め、書き連ねた400字詰めの原稿用紙は実に3500枚。現在も市民講座や地域のサークルで源氏物語などの古典文学を教える中、毎日地道に作業を重ねた。「源氏物語は日本が世界に誇るべき文学。ぜひ多くの方に触れてもらえたら」と中野さんは話している。
勉誠出版発行。A5判、各冊約400頁、2500円(税別)。問合せは同社【電話】03・5215・9021
刊行記念特別展10日から逗子で
同著の刊行を記念した特別展「源氏物語 道しるべ展」が11月10日(火)から16日(月)までJR逗子駅前の「逗子アートベース128」(逗子1の5の4 128ビル地下)で行われる。源氏物語画帖など貴重な資料のほか、同著の直筆原稿なども展示される。
午前10時30分から午後4時30分(最終日は4時まで)。入場無料。
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