県内だけでなく全国各地に広がりを見せる家庭用生ごみ処理機「キエーロ」。その生みの親が葉山町にいる。下山口在住の松本信夫さん(68)、恵里子さん(67)夫妻だ。開発から20年近く、処理機の改良やその後の普及にも携わってきた。キエーロの今は開発者の目にどう映るのか。数年ぶりに夫妻を訪ねた。
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「使い方は人様々。私たち自身、教わることも多いです」。今年に入ってから夫妻が取り組んでいるのは、日ごとの生ごみ処理。毎日となると、野菜くずでも固い芯や大きいものはどうしても残りやすい。そこでミキサーを使って細かくし、土と混ぜ合わせるとほとんどが次の日にはなくなるのだという。「これなら真冬でも問題なくごみが消える。少し電気を使うけど、利用できる人の幅も広がるかもしれない」と信夫さんは期待を寄せる。実はこのアイデア、東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市の仮設住宅に暮らす女性が考案したものだ。
キエーロは現在、葉山町では全世帯の1割強に普及。遠くは熊本や奈良、和歌山でも使われ始め、被災地でも有効利用されている。生ごみ削減の切り札として助成制度を設ける自治体も増えており、県内では横須賀市や海老名市、寒川町、今年4月からは藤沢市でも購入補助が始まった。
ここ3年ほどで機運の高まりを感じているという夫妻。「最近は特に若い世代の利用が増えてきた」と信夫さん。妻の恵里子さんは「子育て世代を中心に自然やエコへの価値が見直されていることが普及の後押しになっているのでは」と推測する。
従来の自家処理は費用がかさんだり、虫や臭いに悩まされるという欠点があった。だがキエーロは自然の力だけで処理ができ、これらの問題が起こらないのが最大の利点だ。ただ、それでも中には処理を面倒に感じ、使うのを断念してしまう人もいる。そこで夫妻に長く使うためのコツを尋ねると「無理をせず、楽しむこと」と声を揃えた。夫妻自身、キエーロの土で家庭菜園をしたり、試行錯誤をしながら夫婦で意見交換したり、何より楽しんでいる様子。「疲れたら一度休んでみてもいい。肩肘を張らず、皆さんそれぞれのやり方でごみ処理を楽しんでもらえたら」
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