グリースメーカー国内大手、協同油脂(株)(本社・藤沢市辻堂神台、池田誠代表取締役社長)はこのほど、宇宙でも使える潤滑油とグリースを開発した。新商品は、大気中や真空でも磨耗が小さく、真空でも蒸発しにくい特長をもつ。今後は、広く実用化へ向け宇宙航空研究開発機構(JAXA)らと研究を続ける。
潤滑油やグリースは、自動車や携帯電話、家電製品など、あらゆる工業製品で幅広く使われており、宇宙開発分野では、宇宙ステーションや人工衛星などでも使用されている。宇宙用については5年から10年と長期間、性能が落ちない「安定性」が求められていた。 従来の潤滑油は、大きくわけてフッ素系合成油、炭化水素系合成油(MAC)の2種類にわかれ、真空では使えるが放射線には弱い、さびには強いが真空では使えない、など一長一短があった。
マイナス40度から400度の高温でも
今回、開発した潤滑油は、フッ素系でもMAC油でもない、先進液体潤滑剤と呼ばれる「イオン液体」をベースにしている。イオン液体は、陰と陽のイオンからなる物質で、身近なものでは「食塩」がこれにあたる。ほとんど蒸発しない、電気をよく通す、氷点下から400度まで利用できる温度域が広い、などの特性をもち、応用した。
同社は、02年から宇宙用潤滑剤の開発をスタート。当初、MAC油グリースでの実験を行ってきたが、03年には、イオン液体に着目、実用化へ向け、さらに研究を進めてきた。
研究に弾みがついたのは09年。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、中小やベンチャー企業を対象に募集した、SBIR技術革新事業。同機構が出した開発テーマは、内視鏡やがん研究などの医療分野と「超高真空対応の低摩擦・低摩耗液体潤滑剤の研究開発」の6テーマ。同社は、潤滑剤の課題に手をあげた。
プレゼンテーションを通過し、年間約1000万円の研究予算を獲得、1年後の第一次審査を通過した。次年度は約5000万円の予算で開発を続け、今年の3月に終了した。
「限られた時間の中、約500種あるイオン液体の中から絞り込み、さび止め剤ととのベストマッチを選定していくのがポイントでした」。開発に携わった遠藤敏明さん、羽山誠さん、山崎雅彦さんらはこの2年間をこう振り返る。
現段階では1kg約300万円と高価だが「量産できれば価格は下げられる。様々な企業の期待に応えていきたい」と話している。
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