各地で熱戦が繰り広げられている高校野球県予選。その会場の一つとして利用される藤沢八部球場(鵠沼海岸)で、長年出場選手を表示してきた「手書きスコアボード」が”最後の夏”を迎えた。改修工事に伴い、来春から完全電光掲示式に切り替わるからだ。見納めとなった今夏も裏方の部員らが丁寧に一字一字を書き入れた。
「ピッチャーが変わったぞ」「背番号見てきて」。試合が動くたび、スコアボードがある作業室では一気に慌ただしさが増す。大会2日目の12日、ジャージー姿の野球部員らが狭い通路を駆け回り、選手名を書き入れた金属板を手際よくプレートにはめ込んだ。
現在のスコアボードは1985年の改修工事で設置されたもの。得点や時計など一部は電光掲示化されたが、30年以上、選手名や審判名を人力で書き入れてきた。現在、手書きスコアボードが残るのは県予選が行われる11球場の内、八部と伊勢原の2球場のみだ。
同球場の裏方を長年支えているのは、球場補助員を務める、藤嶺藤沢高校の控え選手ら。大会が始まる1週間ほど前にメンバー外の選手で会場から自宅が近く、字がきれいな部員を”選抜”する。今年裏方を任されたのは同校2年と1年の計4人。昨年も担当した2年生の長瀬史也君は「これもいい伝統。最後なので、きれいな字を書こうと思います」と意気込む。
暑さに負けず
作業室では、白い粉を水で溶き、縦約1・5m×横約50cmの金属板にはけやスポンジで名前を書き入れていく。作業場所が限られ、冷房がない室内での作業は時間と暑さとの戦いでもある。
試合が始まってからも気が抜けない。いつ選手交代の内線があってもいいよう、ボードを差し替える準備をしておく必要があるからだ。使い終わったボードは水で洗い流し、次の試合に備える。
この日は、藤嶺藤沢の初戦。作業室からは試合の行方が分からず、時折響く声援や応援歌が頼り。「点入ったかな」。スタンドで応援できないもどかしさはあるが、グラウンドの仲間を信じ、心でエールを送った。
この日、藤嶺は無事初戦を突破。18日の3回戦も勝利を収め、4回戦からは4人もスタンドで応援に加わる。
2年生の木村皇介君は「来年は書く側じゃなく、自分の名前を表示してもらえるよう頑張りたい」と笑顔で話した。
「最後まできれいな字を」
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