藤沢 人物風土記
公開日:2022.04.08
「湘南台駅地下アートスクエア」の壁画を描いた画家
廣田 雷風(らいふ)さん(本名:廣田 徹)
湘南台在住 74歳
筆と色で奏でる音楽
○…その絵は音楽を奏でている。鍵盤の上を走り抜ける自転車。色とりどりの音の粒子が溢れ、踊り出す。鮮やかな赤の空に浮かぶ雲の上には祭りを囲む人々の姿。昔見た夢のような、どこか懐かしい、思わず入り込みたくなってしまう風景―。湘南台駅地下広場を音楽や美術、アートの力で盛り上げ、地域活性につなぐ事業の目玉、巨大壁画を手掛けた。
○…出身地は長後。教員の両親のもとで育ち、湘南高校へ進む。美大進学後、恩師・小野州一氏との出会いを経て筆一本の生き方に憧れを抱く。家族からは中々理解が得られなかったが、心のままに描きたいとパリへ渡った。誰よりもいい作品を描きたい。もがき続ける中「絵画と音楽」の融合に一つの自己表現の場を見つけた。支え続けてくれたのは一番のファンであり、最も厳しい観客でもある妻の存在。「彼女無くして創作はできない」と破顔する。
○…帰国後、企業イメージやホール施設の壁画などの仕事が評判を呼び、奇しくも地元から依頼されたのが、アート広場のシンボルだった。後々に受け継がれる自身の代表作になる、という静かな興奮が胸を駆け巡った。毎日駅へ通い構想を練り、ひたすらに筆を動かし続けた。自身にとって絵を描くことは「pure joy」と説く一方、創作には魂を削る。完成した壁画を前に「よくやったな、と自分でも思う」と晴れやかな笑みを浮かべる。
○…最初の依頼から完成まで約3年。「私だけのエネルギーでは成しえなかった。事業に関わった多くの地域の人たちの熱い思いあってこそ」と感慨深げに振り返る。「しばらく休憩」と苦笑しつつ、次回作の構想が頭に溢れている。「描きたい絵が私を呼んでいる」と目を細めた。
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