藤沢 社会
公開日:2025.11.14
学校の枠を超えた視点を
デスク・レポート
▼藤沢市立中学校の女子生徒がいじめに遭い、不登校になり、市外の学校へ転校した。市教育委員会は重大事態と判断し、昨春から第三者委員会で調査しているが、現在当時の生徒に対するアンケート調査用紙を作成している段階で、事実関係すら明確になっていない。教育行政はいじめという人権侵害に対し、スピード感を欠いている。
▼被害生徒が受けた「学校にくんな」「死ね」といった言葉の暴力やトイレへの閉じ込め、体操服の切断、さらには不登校後の「毎日休めて最高じゃん」といった追い打ちをかけるような手紙の投函は陰湿かつ執拗で、深刻な精神的苦痛を与えたことは想像に難くない。被害生徒は現在都内の高校へ通っているが、「加害生徒に会いたくない」と最寄り駅とは別の駅で降り、母親と帰宅するなど心の傷は癒えぬままだ。保護者は「命を落とさなかっただけ救い。でも学校関係者からいまだに謝罪はない」と憤りを露わにする。
▼県教育委員会が先月29日に発表した県内の公立小中高校・特別支援学校のいじめ認知件数は昨年度5万996件(前年度比6722件増)に上り、過去最多を更新。重大事態件数は85件で、前年の約4倍に増えた。子どものSOSが膨れ上がる現状にあり、教育現場全体の抜本的な意識改革と体制強化が不可欠だ。
▼いじめ問題を学校任せにせず、初期段階から行政が介入する大阪府寝屋川市の取り組みが効果を上げている。市長部局の危機管理部に監察課を設置。電話や市公式アプリなどでいじめの情報が入ると、被害者や加害者、教員、保護者などへ聞き取りを実施し、1カ月以内のいじめ停止を図る。これらの仕組みを月に一度、チラシで周知。認知件数は増えたが、細かな事案も見逃していない証拠だ。各自治体が視察に訪れるなど「寝屋川モデル」は全国的に注目されている一方、足踏みが続く藤沢市。迅速性こそが深刻化を防ぐ鍵となる。学校の枠を超えた外部的な視点と法的支援のルートを常設すべきだ。
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