GPSやエンジンといった機械はもちろん、海図やコンパスも使わずに星や月、風を読んで航海するハワイの伝統カヌー「ホクレア号」。日本人初のクルーで、2007年にはハワイ―日本間1万3千キロの航海に参加した内野加奈子さん(長谷在住)が10月30日(日)にトークイベントを開催する。当時の様子や、現在の活動について聞いた。
ハワイの誇り
自分たちの祖先はどうやって海を渡ってきたのか。ハワイの人々にとってルーツに関わるこの問いに対し1970年代始め、伝統カヌー復活プロジェクトが立ち上がった。
ハワイでは数百年にわたり途絶えていた伝統カヌー。その航海術はもちろん、船体のデザインなどの記録も残されていなかったため、ミクロネシアに伝わるものを参考に古代からの方法で建造。1976年、同地の伝統航海術士マウ・ピアイルグ氏の協力を得ながら3千キロ離れたタヒチへの航海を成功させた。
エンジンを持たず、自然の力と人間の知恵のみで進むホクレアの成功はハワイの人々に大きな驚きと自信を与え、伝統文化を大切に継承する世論に繋がったという。その後もホクレアは航海を続け「古代ポリネシア人が島々を自在に行き来していた」という説を身をもって証明したのだった。
日本人初のクルー
この船に日本人で初めて乗りこんだのが内野加奈子さんだ。内野さんは大学生の時に三宅島の海に潜り、その魅力に目覚めた。海に関わる仕事がしたいと考えていたところ、友人からホクレアについて聞きハワイ大学大学院への進学を決意。2000年から海洋学を学ぶかたわら、クルーになるための伝統航海術の習得や船体の整備に携わるようになり、04年に初めて乗船して以降、数多くの航海に参加した。
5カ月かけ日本へ
07年1月、ハワイから1万3千キロ離れた日本に向けホクレアは出発した。ポリネシア文化圏を飛び出す歴史的な航海だった。
クルーは内野さんを含め20〜60代の11人。キャプテン1人と進路を決定するナビゲーター1人が指揮を執り、決められた時間に3人1組で舵をとる。
海上での生活は危険と隣り合わせで制約も多いが、得たものは大きかったという。「海の上にいると『潜在能力』のようなものが目覚めてどんどん感覚が研ぎ澄まされてくる。自分も自然の一部なのだと実感した」と語る内野さん。5カ月後に沖縄が見えたときは「なんて美しい島なんだろうとクルー全員で感激しました」と振り返る。
内野さんはこの航海の様子をまとめた『ホクレア 星が教えてくれる道』(小学館)を08年に出版し高校教科書に採録された。現在は宮崎県や鹿児島県など日本各地で自然を知るきっかけ作りを行う「海は学校」というプロジェクトを主宰している。逗子市で行っている同プロジェクトの比重が大きくなってきたため今年の4月から市内長谷に住み始めた。「帰ってくるたびにほっとします」と落ち着いた雰囲気が気に入っているようだ。
トークイベント「ホクレア 星が教えてくれる道」は10月30日(日)、カフェ・ルオント(長谷2の11の21)で開催される。午後5時から8時まで。予約制で定員20人。3500円(食事・ドリンク・デザート付き)。
予約や問い合わせは【電話】0467・53・8417へ。
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