鎌倉芸術館の総括責任者を務める 岩井 裕一さん 東京都在住 56歳
「地域共創の運営目指す」
○…9カ月に及んだ改修工事を終え、10月1日に再開館を迎える鎌倉芸術館。指定管理者として運営を担うサントリーパブリシティサービス(SPS)で、同館の総括責任者を務める。「鎌倉ならではの公演や企画を通して『見たい、聞きたい、訪れたい』ホールを目指す」と意気込む。
○…東京都出身。大学在学中に飲んだビールの美味しさに感動し、サントリーに入社。「本当は宣伝や広報がやりたかった」というが、一貫して営業畑を歩み、大手コンビニチェーンなどを担当した。転機は8年前。SPSに移り、同社が受託したばかりの山梨県立美術館の運営に携わることになった。「最初は戸惑うことばかりだった」と振り返るが、地元のバス会社にかけあって都内と山梨を結ぶ路線に同美術館の目玉であるミレーの作品をラッピングして都内からの誘客を狙うなど、持ち前の行動力をいかんなく発揮。その後務めた島根県立美術館の支配人時代には、宍道湖畔に建ち美しい夕日が望めるロケーションを生かすために「閉館時間は日没から30分後」とするなど、柔軟な発想で来場者の増加につなげた。
○…昨年9月、鎌倉芸術館に赴任すると、地域をくまなく歩き回った。目指すのは住民や企業との「共創」だ。「市民にとって芸術館が価値あるものとして存在し続けるためには、従来のような待ちの姿勢だけではだめ。私たちが持っている資源をどのように地域に還元するのか。スタッフとともに考え、実行していきたい」と語る。その言葉通り、休館中は積極的なアウトリーチ活動を行い、前庭でのマルシェも好評を博した。
○…自宅のある世田谷区から鎌倉までは約1時間半の道のり。その間に乗る電車は「毎日違うドアから乗り降りする」のが自分のなかのルールという。「何か新しい発見があるかもしれないからね」とニコリ。その旺盛な好奇心とロジカルな思考で、芸術館に新たな風を吹き込む。