鎌倉彫会館の館長に就任した 飯笹 信和さん 大町在住 56歳
伝統の素晴らしさ伝える
○…鎌倉彫の食器を使ったカフェやショップ、ギャラリー、資料館、体験スペースなど歴史と文化、体験と交流の場となる鎌倉彫会館。「もっと多くの人に来館してもらえるように企画していきたい。コロナの影響もあるが、盛り上げていきたい」と館長として抱負を語る。
○…鎌倉で生まれ育った。祖父の代に戦争のため都内から鎌倉へ。疎開先が鎌倉彫の木地師だったこともあり、父も木地師になった。自身は高校まで野球に明け暮れていた。「始発に乗って学校に行き、帰ってくるのは夜遅く」という毎日だった。鎌倉彫と向き合ったのは高校卒業後。工房に入り、一から学んだ。彫師を志した時、父から「やめた方がいいんじゃないか」と言われた。成功する自信があったわけではないが「挑戦したい」という気持ちが勝った。「修行に出てから、一番の相談役は父親。『こんなの作りたいんだ』と話すと、いろいろアドバイスしてくれてね」
○…見様見真似で先輩たちの技術を学び、自身の創意も加わり、少しずつ自分の作品を表現できるようになった。「彫るだけでは、ダメ。お客さんに購入してもらえるようにならなければ」と営業も手掛け、販売してくれる店舗や個人など独自にネットワークを拡げていった。「お客さんから『あのデザイン良かったよ』と喜んでもらえるのが一番うれしい」とほほ笑む。
○…「鎌倉彫って”彫り”に注目されるけど、漆の魅力を知ってほしい」と話す。凹凸のある表面に漆を何度も塗り重ねて初めて鎌倉彫になる。高い技術が集結しながら、日常使いの民藝を目指す。「やりたいことは、まだまだこれから。多くの人に愛される鎌倉彫にしたい」