東海岸北在住の吉岡末子さん(73)による染色展が8月31日(月)まで、茅ヶ崎市民文化会館の1階展示室で開催されている。自宅にアトリエを構え、着物を中心とした染色を楽しみながら取り組んで50年。「展示が着物の魅力を知るきっかけになれば」と話す。
吉岡さんが得意とするのは「引き染め」という技法。染液の中に布を浸す「浸し染め」とは異なり、ハケを用いて多様な色合いやグラデーションを描くことができる。
染色の工程は、まず絵柄をデザインし、型紙を切り絵のようにカット。布に型紙を乗せ、その上から染料をはじく糊を塗ることで、その後デザイン状に染め上げることができる。染料を定着させる「蒸し」のあと、水洗いをして完成だ。
吉岡さんは絵柄のデザインや型紙のカットといった細やかな作業はもちろん、餅粉とぬかを用いた糊の製作や、自宅アトリエに設置した蒸し器による「蒸し」まで、ほぼすべての工程を手掛ける。「茅ヶ崎の風景をスケッチするなどして、デザインを決めている。型紙を細かく切るのも手間がかかるが、最後までやり遂げるのが楽しい」と話す。
職人のもとで表現開拓
吉岡さんは小学生の頃塗り絵に熱中。特に細やかな着物の柄を塗るのが好きだった。のちに多摩美術大学デザイン科に進学し、染色を専攻した。
在学時は枠に縁取られた絵画を染料で描く「染彩画」に取り組むことの多かった吉岡さん。和服を染めるようになった契機は、学生運動だった。「4年生の頃に大学が封鎖されて行けなくなった。そこで、着物を染める職人さんのところに勉強しに行くことにした」と振り返る。
訪れたのは江戸川の「松原四兄弟」と呼ばれた染色家の工房。1年にわたり、「長板中形」という、型紙を使って藍で染める伝統的な染色技法を身につけた。「学校で学んだデザインと伝統技法が噛み合って、その後の活動に生かされたと思う」と話す。
子や孫の着物作りも
創作は家事や育児の合間に趣味として継続。作品をコンテストに応募し、賞金を材料の購入代に充てるなどしながら、無理なく楽しんできた。和裁も学び、娘の七五三や成人式の着物は、染色から仕立てまですべてを手掛けた。孫の七五三にも使われ「2代続けて着てくれてうれしい」と目を細める。個展は32年前に初めて開催し、五輪のタイミングに合わせて4年に1度継続している。
「意外と力仕事」という染色を続けるため、60歳からランニングを開始。湘南マラソンにも出場するなど活発だ。「自宅にアトリエを作ってもらったり、理解を示してくれた家族に感謝したい」と話した。
個展は文化会館で31日まで開催。さをり織り作家・入澤和枝さんの個展を同時開催。午前9時30分から午後7時(最終日4時)まで。無料。
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