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公開日:2019.10.03

目指せデフ五輪で世界新
難聴のスイマー 茨隆太郎さん

  • 母校の東海大でトレーニングに励む

  • 躍動感あふれるバタフライ

 聴覚にハンディキャップを抱えながらも、強気の泳ぎで世界を魅了するアスリートが平塚市にいる。東京五輪・パラリンピックの機運が高まるなか、茨隆太郎さん(25/真田在住)は、2021年に開催される夏季デフリンピックでの世界新記録を目指している。

日本新を樹立

 茨さんは、9月21日に横浜国際プール(都筑区)で開催された「2019ジャパンパラ水泳競技大会」に出場し50mバタフライで25秒66の日本新記録を樹立した。

 今年8月にブラジルサンパウロで開かれた世界最高峰の大会「世界ろう者水泳選手権大会」では、200m・400m個人メドレーで優勝したほか、800mフリーリレーと400mメドレーリレーで2位、100mバタフライ・400mフリーリレー・男女ミックスメドレーリレーで3位に入賞。躍動感あふれる泳ぎで会場を盛り上げ、7個のメダルを日本に持ち帰った。

 国内外の主要大会で好成績を連発する茨さんは、4年に一度開催され、ろう者アスリートにとって最高峰とされるデフリンピックにこれまで3回出場している。09年台北大会では200m背泳ぎで金メダルを獲得するなど、日本の障害者スポーツをけん引する一人といえる。

 現在、SMBC日興証券に所属し、母校である東海大学湘南キャンパスのプールでトレーニングを積んでいる茨さん。大会のたびにメダルを期待される実力派だが、決して平たんな道を歩んできたわけではない。

誰かの励みになる

 1994年2月、先天性感音性難聴をともない東京都江戸川区に生を享けた。生まれつき耳が聞こえない愛息に両親は「強くたくましい子に育ってほしい」と願い、2歳から水泳を習わせた。

 今と変わらない勤勉さと向上心もあって実力はすぐに開花、瞬く間に競技の虜となった。小学6年の時にデフリンピックの存在を知ると、「自分と同じ状況にある人たちと真剣勝負をしたい」と目標を定めた。

 小中学生のころ、水の中は夢中で目標に挑めるやりがいに満ちた世界だったが、外の世界には嫌がらせがあった。補聴器を装着しても音を拾うことが難しく、手話で意思疎通する茨さんをからかい、真似する周囲の心ない人たちに深く傷付けられたことは一度や二度ではない。

 大好きな水泳が、自分のためから「人のため」に変わったのはちょうどこのころ。「耳が不自由だとしても頑張れば結果は出せる。堂々と生きていくことができる」。同じ境遇の下、つらい目に遭っている人たちの「励みになろう」と決心した。

2年後に引退

 それから15年あまり。2021年のデフリンピックを最後に競技生活にピリオドを打つと決めた。退路を断って目指すのは「世界新記録と金メダル。そしてやり切ったという最大級の達成感」だ。

 9月26日には入籍し、最愛の伴侶のサポートも受けながら、トレーニングの毎日を過ごしている。「多くの人に支えられ今があると強く感じます。恩返しの気持ちも泳ぎで伝えられたら」

 心優しいスイマーの最終章が始まった。

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