平塚・大磯・二宮・中井 人物風土記
公開日:2022.06.30
製パン業の発展に尽力したとして県民功労者表彰を受賞した
高久 榮二さん
宝町在住 80歳
弦斎カレーパン街の顔に
○…高久製パン株式会社(老松町)の3代目で、現在は会長として会社を支える。5月に7年務めた神奈川県パン協同組合連合会副会長を退任。6月には製パン業の発展に尽力したとして県民功労者表彰を受賞した。現在は同会の顧問として業界を見守る。
○…同社の前身は、1924年に祖父・榮造さんが横浜市鶴見区で創業した洋菓子店だ。のれん分けで平塚駅前に「高久パテシート」を構えたのが祖父の弟子でもあった父・二郎さん。祖父と父から1字ずつもらった名前には後継ぎへの期待がにじんでいる。
○…「若い頃は、継ぐのが嫌だった」ときっぱり。まだ手作業で行われていたパン作りの過酷さは近くで見ていたからこそ知っていた。商社勤めを希望していた学生時代、母に言われたのが「パン屋にならなくてもいいから、お父さんのそばにいなさい」。まもなく製パンの機械化が決まり、工場の設計などを任された。「子どもの頃ラジオに魅了されて以来、機械いじりが大好き。修理は私の役目になった。母の言う通りそばにいたら気づけばパン屋になっていた」と笑う。
○…街おこしの一助にしようと『弦斎カレーパン』を生み出した。平塚に居を構えた作家・村井弦斎の著書『食道楽』のレシピにヒントを得て開発。独特なもちもち感の秘密は生地に練り込んだご飯だ。「試作中、3%の割合で練り込むのを私に内緒で社員が5%にした。これがおいしくて。もし知っていたら採算が合わないと反対した」。福神漬入りの「カレーライスのようなカレーパン」は瞬く間にヒットし催事出店で47都道府県を駆け巡った。「崎陽軒のシウマイみたいな存在になりたいね」と我が子のような一品が、バトンとなり受け継がれていく。
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