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公開日:2026.09.10

ベルマガ通信 敗北の裏に宿る右サイドの「意志」 J2第5節 vsベガルタ仙台 湘南1-3仙台

 開幕から2勝2分、4得点2失点と無敗で戻ってきたホーム平塚。前節の大宮戦で2失点を喫した背景もあり、ピッチに漂っていたのは緊迫感だった。今節は「J2・J3百年構想リーグ」優勝チームとの対戦であり、同リーグ地域リーグラウンドで湘南が唯一勝てていなかった仙台が相手。まさに湘南の「深化」が問われる一戦だ。

 試合の立ち上がりは湘南の狙い通りの展開だった。前半7分、右サイドバックの鈴木雄斗選手と右サイドハーフ加瀬直輝選手の右サイドの崩しからFW陣がシュートへ持ち込みセットプレーを獲得。加瀬選手のコーナーキックを起点に武田翔平選手を経由するデザインされた形から、最後は山田寛人選手が押し込んだ。前節の大宮戦に続く山田選手の2試合連続得点、そして今季3得点目となる先制ゴール。主導権を握る確かな手応えに、平塚の空気は確かに揺れた。前半16分にも、右サイドの2人の連動からディフレクションを挟みつつシュート完結まで持ち込むなど、序盤の湘南は右サイドのユニットを軸にゲームをコントロールしていた。

 しかし、90分を経てスコアボードに残されたのは1-3という冷酷な数値。セットプレー絡みの2失点とPKでの逆転負け――。守備組織の一瞬の弛緩と個人判断の遅延が招いた敗戦だ。湘南の長澤監督は、失点に至る構造の歪みを冷静に言葉へ落とし込んだ。「後ろ4枚(ディフェンダー4人)でやっている以上、ボールへプレッシャーをかけるのが大原則。アーリークロスを1本入れられて重心が下がった。同サイドに閉じ込めなければいけない部分を相手に譲り、見守る形になって押し込まれたのは当然の結果。(その大原則ともいえる)ベースを徹底しきれなかった」。リードしているにも関わらず相手の攻撃に対して不必要に構えてしまった。右サイドの先発2人も「先制してから構えてしまった部分がある」と試合を振り返り、加瀬選手の自己分析も監督と同じである。「相手左CBのマテウス・モラエス選手に自分がもっと圧をかけて自由にボールを蹴らせなければ、左ウイングバックの石井隼太選手にも時間をつくらせずにすんだ。そこは反省しています」。指揮官の言う「閉じ込められなかった構造」と、加瀬の「一歩踏み込めなかった判断」。敗因のロジックは、試合直後の時点でピッチとベンチの間で客観的に言語化されている。そして視点を攻撃へ移せば、そこには選手たちが自ら張り巡らせた狙いがうかがえる。顕著だったのは後半の局面だ。相手は3バックとウイングバックが引いて5バックを形成する5-3-2の陣形。その重厚なブロックに対し、鈴木選手は相手の構造上の隙を冷徹に見極め、中央の位置へ移動してビルドアップの起点となった。「相手の中盤が3枚で、うちのサイドハーフが相手ウイングバックを押さえ込めていた。そうなると相手のインサイドハーフが出てきた時に、どこのスペースが空くかは明確でした。『あ、ここが使えるな』と。(相手の陣形は湘南でも経験しているので)相手の嫌がる場所は分かっていただけに、前半からもっとそこを突きたかったです」。鈴木選手の語った明確な意図こそ、チームが停滞を破るための思考の核である。加瀬選手もまた鈴木選手の位置取りを汲み取りながら「自分が囮になってでもスペースを開ける動きが必要だった」と自身の役割を言語化。90分間を通して右サイドの縦関係が完璧に機能し続けたとは言い難いが、明確な「戦術的意志」が脈打っていた。

 曖昧な敗北ではない。何を修正し、どうチームの機能を再現させれば勝利に届くのか。その解を携えていることこそが、この敗戦における最大の事実だ。敗戦の中でも、ピッチ上では戦術的意図を持った試行錯誤が確かに行われている。J2・10位に後退した敗戦とはなったが、巻き返しへの兆しはある。昇格争いは、まだまだはじまったばかりだ。(スポーツライターすぎさきともかず/ベルマガ記者)

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