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小田原・箱根・湯河原・真鶴 人物風土記

公開日:2016.10.22

「ジャパン・ケーキショー東京」ピエス・アーティスティックの部で1位に輝いた
渡邉 智世さん
樫の樹(曽比)勤務 30歳

涙の数だけ強く、美しく

 ○…チーズケーキにババロア。誕生日や記念日に食卓を飾った母の味が原点だ。見様見真似で台所に立ち、初めて1人で作ったクッキーは「確か、美味しくなかった…」。菓子作りを始めて20年近く、その道は常に険しく涙があった。

 ○…これまでを振り返ると、負けん気の強い彼女の芯が浮かび上がる。仙台で小4からバドミントンを始め、高3まで練習に明け暮れた。負けて悔しくて泣き、また練習して…体育会系気質は部活漬けの毎日で育まれたものだ。卒業後は「手に職をつけたい」と調理師学校に入学、バイト先のケーキ店にそのまま就職した。朝5時半に出社し、苺のヘタ取りで1日が始まる。”女の子の憧れ”とは程遠く、長時間の立ち仕事は「体力的にきつかった」。それでも「もっと技術を身につけたい」とがむしゃらに働き、生まれ故郷の神奈川へ戻った。そこで偶然目に留まった『樫の樹』に飾られた一枚の賞状。後の師匠となる草間幸シェフがケーキショーで受賞した時のものだった。「私も賞がほしい」。求めていたものを見つけ、迷わず面接を申し込んだ。

 ○…入社してからもまた涙の連続だった。ミスをする度に「やめてもいいよ」とシェフから愛の鞭がとぶ。いつしか店舗の3階は”泣きスポット”になった。後輩がケーキショーで入選する姿を横目に「今にみてろ」と焦りを打ち消し、挑戦し続けること9年。「自分は天才肌じゃないから、何度も失敗して、反省を繰り返し」掴んだ頂点に、笑顔と共に、瞳を潤ませた。

 ○…日本一の称号を得た今、「部門を変えて挑戦したい」と早くも次の目標ができた。休日もグルメ探訪や神社巡りなど、家でじっとしていられないアクティブ派。エネルギーに溢れる様は、まるで作品のモチーフになった大輪の花のようだ。流した涙の分だけ、もっと上手に、もっと美味しく。「誰かをハッピーにさせる」お菓子の力を信じ、今日もパティシエ道をゆく。

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