【Web限定記事】熱戦のあとに 「１」を追い求めた夏 準Ｖ・相洋高の三羽烏
小田原・箱根・湯河原・真鶴版
公開：2020年9月5日
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チームの中心を担った本田・加藤のバッテリー
夏の甲子園をかけた神奈川県高校野球選手権の代替大会として行われ、東海大相模高の優勝で幕を閉じた「県高校野球大会」。１９４７年の創部以来、夏の公式戦で初めて決勝に進出し、準優勝した相洋高校（小田原市）の躍進を支えたのは、マウンド上の『三羽烏』だ。
吉川宗吾、石井将吾、そして本田眞也。決勝戦では、２年半苦楽を共にしてきた３人で継投し、王者と渡り合った。「コースをつき緩急で勝負」した先発・吉川が打ち気を削ぐ投球術をみせれば、続く石井は「１年間身につけてきた」ツーシームとチェンジアップで打者を翻弄。試合の流れを死守しながら本田につないだ。ピンチの場面でマウンドを託された本田は「逃げない投球」を貫き、投じた”勝負の一球”は打ち返されたが、最後まで懸命に腕を振った。
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１年秋からエースナンバーをつけてきた本田を中心とし、ポーカーフェイスの吉川、鍛錬の冬を越えて急成長を遂げた石井が脇を固めてきた。吉川が「本田がチームを引っ張ってきた」といえば、石井も「本田の制球力を見習ってずっと練習してきた」。２人は、エースナンバーをつける投手が誰かを理解し、認めていた。
それでも投手にとって「１」は特別な背番号。本音をいえば「やっぱり１番をつけたかった」（吉川）。２人の思いを感じ取っていた高橋伸明監督は今大会、ベスト８決めの慶應義塾戦を石井に、決勝の大舞台を吉川にと、「山場になる」と踏んだ試合の先発をそれぞれ託した。「エースナンバーをつけさせられず悪かった。代わりに大事な試合をお前に任せる」、そう告げて。
２人の思いも背負った本田はいう。「エースはチームの要。弱いところは見せられない。どんなにピンチで苦しくても『ゼロに抑えて帰ってくるんだ』と練習から言い聞かせてきた」。妥協のないピッチングは、「誰よりも頑張れるエネルギー」をくれる背番号が原動力だった。だからこそ決勝の舞台、チームの信頼で託されたマウンドで打たれ、敗れたことは「一番悔しい負け方になってしまった」。試合後、王者の歓声を遠くで聴きながら、泣き崩れるしかなかった。それぞれの持ち味を熟知した女房役・加藤陸久主将（３年）は「お前がいたから、ここまでこれたんだ」。そっと肩を抱いていた。
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決戦から一夜明け、再び集った３人の顔はどこか清々しさが漂っていた。「一生忘れられない試合ですね」と笑顔を見せた吉川。「高校最後の夏のハマスタ、３年間で最高のピッチングが出来た」と胸を張った石井。今後はそれぞれ次のステージで野球を続けるつもりだ。
そしてエースは「やっぱり申し訳ない気持ちが一番だが、最後を託してくれたことに感謝したい。１番をつける者としてこの負けを今後に繋げていきたい」と視線をあげた。背番号１は「自分を強くさせてくれた番号でした」。それぞれの特別な夏が終わりを告げた。
秘めたる闘志を持つ吉川
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相手を翻弄する投球を見せた石井
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