井上酒造の7代目として日本酒の普及に努める 井上 寛さん 大井町上大井在住 65歳
”あしがらの酒”守る
○…大井町で226年続く酒蔵・井上酒造の7代目。国内市場での日本酒の低迷を打開しようと、地元の湘南ゴールドを原料に使った日本酒リキュールの開発や、口当たりの良い発泡純米酒の商品化など新ジャンルの酒づくりにも余念がない。「足柄地域の酒文化を絶やさないよう、時代に合わせた新しい形の酒を提案していくことも酒蔵の大切な役目だと思う」
○…先代の父は昭和40年代に日本酒の輸出に情熱を注いだ。父の跡を継いで四半世紀、「伝統的な日本酒づくりの真髄の追求と、新たな日本酒ファンの獲得」の2本柱を実践してきた。酒の魅力を広める活動にも意欲的で、日本酒をテーマにした講演依頼も少なくない。海外の美食家がこぞって日本食を高く評価するなか、”SAKE”にも注目が集まっている。井上酒造の酒蔵でも「箱根に訪れた外国人観光客が見学に来ることも増えている」と、手応えを感じている。
○…1949年(昭和24年)大井町上大井生まれ。配達用のトラックの助手席に乗るのが好きな子どもだった。中学生になるとビートルズに感化されロックにのめり込んだ。挑戦のマインドはこの頃に培われたのかもしれない。青春時代を彷彿とさせる海外アーティストの来日公演には今でも足を運び、大音量を全身で感じることもある。これが何よりの気分転換になるという。
○…地元の農家から「出荷先が少なく、栽培を続けるか悩んでいる」という話を聞き、大井産の湘南ゴールドを生産者から仕入れ、原料に使用した。今年の「湘南ゴールドリキュール」には地元への思いが強く込められている。「地場の産業である酒造りに地元産の材料を使う。それにより少しでも地域に貢献したい。いずれは足柄産酒米100%の酒を作れるよう、酒米栽培の普及にも取り組みたい」。その足掛かりとして仕込んだ小田原産米100%の酒が秋に完成する。