「ヴェ〜、ヴェ〜」と丹沢山塊にこだまする羊の声。5頭の羊と一緒に暮らすのは、秦野市堀山下・堀西地区で「やまやま農園」を営む杉本学さん(41)・美佳子さん(42)夫婦だ。美佳子さんは、刈り取った羊毛を自身の畑の植物を主に使用して草木染めをし、昔ながらの紡ぎ車で糸を紡ぎ、帽子やフェルト細工を手作りしている。
伊勢原市生まれの美佳子さんは、幼い頃から動物や自然が好きだった。
東京農業大学短期大学部農業科造園コース卒業後は、造園の設計事務所に就職するも、デスクワーク中心のため「自然を感じたい」と退職。遺跡調査のアルバイトをしながら、旅費を貯めてはマダガスカルへ渡航したり、カナダでトレッキングをしたりしながら数年間を過ごした。
歌を歌うことも好きで、ボイストレーニングに通った経験も持つ。都内のステージに出演し、そこで学さんと出会い一緒に音楽活動を続けていく中でも、自然への思いが募っていったという。30代半ば、「都内から離れ少し田舎へ」と一大決心。2人は入籍し、2008年に引っ越してきた。
それから2年間、はだの市民農業塾で学さんが農業を学び、その後、畑を借り「やまやま農園」を始めた。
羊との出会いは2011年秋。友人が手放すという羊に一目惚れ。その後、羊農家からも購入などして3頭を飼育。今シーズン、1頭のメスが繁殖に成功し、約2週間前、待望の双子の子羊が誕生した。今では「羊のいる農園」として近所でちょっとした話題になっている。
当然毛の刈り取りは夫婦の仕事。年に1度、5月上旬に裁ちばさみで丁寧に刈っていく。ゴミを落とし水洗いし、更に酵素系の洗剤を使用して2度洗う。そして、乾いたらブラッシング。この状態では真っ白だが、美佳子さんは農園にあるウコンやマリーゴールドなどの草木を使って染めてから紡ぎはじめる。自然が持つ一期一会の美しい色が魅力だという。
紡ぎ車を手に入れたのは昨年。年代物のため、知人から譲り受けた時には修理が必要だった。同じ頃、同タイプの紡ぎ車を手に入れた友人がおり、修理を請け負ってくれたという。「本当に様々な人の縁で糸紡ぎを始められた。周囲に恵まれましたね」とほほえみながら紡ぎ車を動かす。
日中は農作業があるため、紡いだ糸で作品を作るのは夜中。「夜なべですよ」と笑いながら編み上げたニット帽を手に取り、かぶってみせる。すべてが手作りの作品、愛着は計り知れない。現在はフェルト細工等を販売したりと、羊毛作家としても活躍している。「時間があればセーターを編んでみたい。子羊たちの毛で編むなんて贅沢ですよね」。夢の実現のために美佳子さんは今日も夜な夜な紡ぎ車を回す。
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