(公財)鎌倉能舞台の業務理事で「能を知る会」を主催する 中森 貫太さん 長谷在住 55歳
「能の魅力、鎌倉から発信」
○…能楽の普及と振興を目的に1971年、長谷に完成した鎌倉能舞台。開設当初から40年以上続くのが「能を知る会」だ。初心者にも分かりやすい演目を選んだうえで解説なども付くとあって好評を博している。今年度の第1回公演は5月3日。「能は数百年にわたって磨がれ洗練されてきた芸。多くの人に生の迫力、説得力を間近で感じてもらえれば」と語る。
○…鎌倉で生まれ育った。能楽師の父・晶三さんの指導の下、2歳で能の世界に入り、厳しい稽古の日々を送ってきた。現在は観世流シテ方として舞台に立つかたわら、後進の指導や鎌倉能舞台を運営する公益財団法人の業務理事として、公演の手配や事業のPRなどに奔走する。「私にとって能は生活の一部。大変なことばかりですが、辞めたいと思ったことは一度もありません」と微笑む。
○…鎌倉能舞台の創設者で8年前に亡くなった父は、レーザー光線を演出に活かした「エレクトロニクス薪能」で周囲の度肝を抜くなど「とにかく型破りな人だった」。「能を知る会」はそんな父が始めたもの。今でこそ同様の試みは各地で行われているが、当初は「観客にこびている」と批判されることもあった。「父には『このままでは能が滅びてしまう』という危機感があり、その姿勢がブレることはなかった」と振り返る。遺志を継ぐように、自身も小中学校での公演など普及に力を入れる。今年、修業中だった長男・健之介さんも鎌倉に戻る予定で「能を次世代に受け継ぐ」という父の宿題は、3世代にわたる取り組みになりそうだ。
○…ゴルフが趣味で、若い頃はカーレースにも打ち込んだという行動派。ロータリークラブや青年会議所で、地域活動も積極的に行ってきた。「伝統や文化を尊ぶ鎌倉だからこそ、私たちの活動が続いてきたと思う。これからも鎌倉から、能の魅力を発信していきたいですね」。そういうと満面の笑顔を見せた。