国産ビール産業発祥の地である横浜市中区。近年クラフトビールの醸造所が増えているこの地で、廃棄予定の食材を活用したビール作りや醸造過程で出るモルト粕(かす)を使ったクラフト紙の製造など、企業間で連携しながら環境に配慮した取組が進んでいる。
廃棄食材を活用
今年4月に開業した醸造所「里武士(りぶし)・馬車道」(運営会社/AJB Co.)=中区北仲通=では、三菱UFJ信託銀行(株)と協働で、社会課題解決に向けた商品開発を行い、このほどサステナブルビールの販売を開始した。カカオの外皮や商品として出荷できない果物など、廃棄予定の食材を活用している。
以前から同社を含めたクラフトビール業界ではパンの耳など廃棄食材を利用したビール作りが進んでいるが、今回は三菱UFJ信託銀行のデータサービスアプリ「Dprime」のユーザーデータを活用し「健康や美容に関心のある20〜30代の女性」など属性の好みに合わせて作られた新感覚のビールとして、新たな価値を創出している。
麦芽かすを再生紙に
西区みなとみらいを拠点に社会課題の解決に取り組むスタートアップの(株)kitafuku(キタフク)では、中区内を中心としたクラフトビール醸造所と連携しながら、醸造過程で出る麦芽の絞りかす「モルト粕」を用いた再生紙「クラフトビールペーパー」を、昨年から製造している。
開発時から協力している中区の横浜ビールによると「1タンクの醸造で約200kgのモルト粕が出る」といい、これまでも堆肥に活用するなどしてきたが、ほとんどが産業廃棄物として捨てられるのが現状。「商品を通じて環境問題について考えてもらうきっかけになれば」と考えている。
このクラフトビールぺーパーを活用したコースターやメニュー表などが醸造所併設の飲食店で活用されるほか、一般向けの名刺も人気に。最近はクラフトビールの聖地・ドイツなど海外からも注目されているという。キタフクの松坂匠記代表取締役は「横浜から国内外にこのアップサイクルの仕組みを広げていけたら」と話している。
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