登録した患者の病歴や薬の処方歴といった医療・介護情報を医療機関や介護施設などで共有する仕組み「サルビアねっと」が、運用開始から2年半を過ぎ、登録者数1万人、施設数も100を超えるなど広がりを見せている。関係者らはコロナ禍でも増加したことを喜ぶ一方、「まだまだ足りていない」とさらなる拡大を目ざす。
「サルビアねっと」は、情報通信技術(ICT)を活用し、電子カルテ情報や薬の処方歴、検査結果などを共有するネットワークシステム。患者一人に対し、医師や福祉関連などの多職種が包括的に連携しながら見守ることを可能にする。
2019年、済生会横浜市東部病院、佐々木病院、汐田総合病院と、区内三師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会)らで構成される(一社)サルビアねっと協議会が主体となりスタート。団塊の世代が後期高齢者となる、いわゆる「2025年問題」の対策として、同年に市が公表したICT活用の地域医療介護連携ネットワーク構築ガイドラインのモデルケースに選ばれた形だ。
類似の取組が新潟県佐渡市などにあるが、都市型では初の試みとして、総務省から補助金を受けるなど国からも動向が注視されている。
地道な勧奨継続
同協議会によると、登録者数が1万人を超えたのは上半期末。11月11日現在で1万1375人となっている。
個人情報を取り扱うため、利用には患者、施設側も登録が必須。ともに数が増えるほどメリットが大きいため、参加施設や医師らが患者一人ひとりに勧奨するなど地道な活動を続けてきた。
昨年には神奈川県の補助事業に採択され、隣接する神奈川区にもエリアを拡大。協議会メンバーに同区医師会らも加わったことで、登録数増加を後押しした。
成長途中のシステム
一方で、「ネットワークを十分に活用するには、患者、施設とももっと増やさないといけない」と参加する医師の一人は説明。例えば、救急搬送先の施設が登録していても、患者が登録していなければ、病歴やアレルギーの有無といった情報はわからないまま。「まだメリットを感じるまでには至っていない」と医師は話す。
協議会は「システムは生まれたばかりの赤ちゃんと同じ」と位置づけ、課題ごとにワーキンググループを作り、さまざまな角度から成長させようと努める。
昨年11月にはスマートフォンからの患者登録機能を拡充。東部病院の外来予約サービスも稼働した。これにより、紹介状をもらい電話などでの予約が不要となった上、検査結果を共有し、早期に適切な対応へつなげることも可能とした。現在他の病院に展開するため準備中だという。
患者の登録は無料だが、施設側はシステム維持などのために登録料がかかり、補助金で賄う導入費が高いなど課題は多い。「一番は患者のメリット。使いながらニーズを吸い上げ、機能を整えていき、施設側にも有益にできれば」と協議会。同協議会の理事として開始当初から参加する鶴見区医師会の芝山幸久会長は「今後、災害やパンデミックの際にも役立つ。時間はかかるが、良さを感じるまで拡大させなければ」と話した。
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