県政報告 「やりたいこと」を「できること」に 〜筋電義手を知っていますか?〜県会議員(川崎区選出)公明党 西村くにこ
手を欠損した人が使う義手のほとんどは、外観は人間の手に近いものの、動かせない「装飾義手」といわれるものです。一方「筋電電動義手(以下、筋電義手)」は、訓練により自分の意思で動かせる<ロボットハンド>を指します。
筋電とは、脳の命令で筋肉を動かす時に生じる微弱な電流で、義手の内側にある電極が筋電をひろってモーターを動かし、ロボットハンドを開閉させて、ものを“つかむ”“離す”という動作が可能になります。
日本では1年に約400人の先天性上肢欠損児(手や足の形状が不完全な状態で生まれる子ども)が誕生しています(2018年東京大学医学部附属病院による全国調査の推計)。子どもが筋電義手の操作を習得するには3〜5年ほどかかりますが、一度マスターすれば、靴下をはく、折り紙を折る、縄跳びを跳ぶなど、さまざまな両手動作ができるようになります。
■未来筋電義手センターを設置
神奈川県では公明党の提案で、2017年に神奈川リハビリテーション病院内に「かながわリハビリロボットクリニック(KRRC)」が開設され、他のロボットリハビリと合わせて、筋電義手の訓練もできるようになりました。さらに昨年は、幅広い世代への筋電義手の普及をめざし、「未来筋電義手センター」も設置されました。しかし、小児筋電義手の普及は容易ではありません。小児用の筋電義手の費用は1台約150〜160万円。国からの公的補助金の支給制度を使えば3〜4万円ほどで購入できますが、申請する際には筋電義手を使いこなせる証明が必要です。一方、訓練用の筋電義手には公費負担の制度がなく、その上、子どもの成長に伴い新しい訓練用義手も必要になります。病院側が訓練用義手を用意する場合も、成長に合わせてパーツを作り変えるなど、習得に係る3〜5年の間に1人当たり300〜400万円のメンテナンス費がかかり、費用面での課題は山積しています。また、乳幼児からの訓練を支える医師や作業療法士などの人材もまだまだ少ないのが現状です。
■小児筋電義手バンク設立へ
私は昨年の決算特別委員会で、これらの課題を克服し、小児筋電義手の普及を促進するため「小児筋電義手バンク」の設立を提案しました。
そしてこのほど県は、令和4年度当初予算案に訓練用義手の購入費用を計上し以下の方針を打ち出しました。【1】寄付を受け付ける「バンク」を設立【2】バンクへの寄付を活用して訓練用義手を拡充【3】訓練や購入を全般的にサポートする義肢装具士の養成【4】実証実験の実施。
現在、小児筋電義手を本格的に扱う医療機関は、神奈川リハビリテーション病院を含め全国で3カ所のみ。子どもたちの「やりたいこと」を「できること」に繋げるため、施策のさらなる展開をめざします。
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12月19日
12月12日