地域に根差した中核病院として相模原の医療を支えてきた総合相模更生病院が今年、創立80周年を迎えた。同院を運営する社会福祉法人ワゲン福祉会は、高齢者施設や保育園など広範囲な医療、介護、福祉事業を展開し、地域とともに歩んできた。超高齢社会の進展や生産年齢人口の減少に伴って地域医療が大きな転換点を迎える中、市民の安心を支える持続可能な医療体制の構築へ向けて、行政と中核病院が考える未来への展望とは――。本村賢太郎市長と同院の松本豊院長に話を聞いた（10月23日取材）。

今年創立80周年「医療と福祉の連携を」

――創立80周年を迎え、相模原市における医療ニーズの変化をどう感じていますか

　院長「超高齢社会の進展や猛暑の影響で救急需要が増えています。当院では、救急車の応需率は80％を超えています。受け入れ台数も、今年１月から９月までで２千件を超えており、昨年の１・３倍程度の増加となっています」

　市長「市民の誰もが住み慣れた地域でいきいきと充実した生活を送るために、暮らしを支える医療は欠かせない。本市でも人口減少、高齢化が着実に進んでおり、医療ニーズの質・量が変化する中で、身近な地域での医療体制確保が必要です」

　院長「当院では受け入れを断らない姿勢を大切にしています。救急車の受け入れもできる限り対応し、後方支援や在宅医療との橋渡しを進めています。年末年始も、当番日は24時間体制で受け入れを行う予定です。限られた資源の中で救急医療を適正に利用していただき、『来てよかった』と思ってもらえるよう努めてまいりたいと考えています」

　市長「市は現在、特に不足している急性期および回復期の病床の整備を進めています。また救急車の適正利用や『上手な医療のかかり方』の普及啓発なども含めて、救急需要への対応を進めています」

――超高齢社会の進展によって、在宅医療・介護のニーズも高まっています。急性期以降の支援についてどうお考えですか

　院長｢入院前の生活に戻ることが難しい状況で退院を迎える高齢の患者さんがしばしば見受けられます。『治して終わり』ではなく、退院後のフォロー体制を含めて地域全体で支える仕組みが欠かせません。命に関わる医療を途切れさせないことが我々の使命。医療と福祉の切れ目ない連携をどう築くかが大きな課題といえます｣

　市長「そのためには医療と介護の連携が不可欠ですね。市は現在、在宅医療・介護連携推進会議などで医療・介護従事者向けの入退院支援の手引きの作成などに取り組んでいます。今後も幅広く意見を聞きながら、在宅医療・介護連携の取り組みを進めたいと考えています」

　院長「当院は入院の受け入れと退院支援を一本化した『患者サポートセンター』を今年１月に新設しました。また法人としては昨年、退院後の在宅治療が難しい方などを対象とした『ナーシングホームゆたか』を開業しました。安心して退院できる環境整備をこれからも進めていきます」

人材育成、まちづくり「地域に尽くしたい」

――一方、生産年齢人口減少による人材不足が深刻です

　院長「業界全体で特に看護師が不足しています。資格を持っていても別の仕事を選ぶ方もいる中で、いかに定着を推進するか。当院では働きやすい環境整備に加え、若い世代がスキルアップをめざせるよう組織の強化を進めています」

　市長「市としても看護専門学校の運営支援や学生への修学資金の貸付のほか、『潜在看護師』を対象とした就職相談会や復職技術研修会などに対して支援を行っています。人材の定着・確保を図るため、院内保育を実施する医療機関への支援も継続的に行っています」

――総合相模更生病院が隣接する相模原駅北口地区は今夏土地利用計画が策定され、今後大きな発展が期待されています

　市長「相模原駅北口地区のまちづくりは、リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)が設置される橋本駅周辺地区とともに首都圏南西部の広域交流拠点の一翼を担い、本市の持続的な発展につながる重要なまちづくりです。国との協議と合わせて、地域の方々や交通事業者などと連携し、駅周辺地区全体の価値を高めていきたいと考えています」

　院長「病院という施設はまちづくりにおいて中心的な役割を果たすものだと思います。商業施設や学校、そして病院が一体となった新しいまちづくりの中で、当院も積極的に関わって地域のために尽くしていきたい。

　当院が創立80周年という節目を迎えることができたのは、地域の皆様の支えがあってこそ。これからも『信頼と調和』という理念のもと、地域に根差した病院として地域の皆様へ安全や安心を提供し、『誰一人取り残さない医療』という市の理念を実践の形で支えていきたいです」

社会福祉法人ワゲン福祉会／総合相模更生病院

神奈川県相模原市中央区小山 3429

TEL:042-752-1808

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