さがみはら中央区・緑区 社会
公開日:2026.09.17
子の笑顔を力にあと5年 90歳のリンゴ農家 高足宜男さん
緑区青根のリンゴ農家、高足宜男さんは、90歳という高齢ながら軽やかな足取りで果樹の間を進む。「あと5年は続けたい」──。そう語る高足さんを突き動かしているのは、農業体験に訪れる子どもたちの笑顔や元気な姿だ。
広さ5アールのリンゴ農園には、つがる、陽光、ふじ、ぐんま名月など13品種、約50本の木が並ぶ。「一時でも直売所でリンゴを切らさないように」と、9月中旬から11月いっぱいまで、各品種が次々に収穫期を迎えるようにした。
梅や野菜を含めると計35アールの畑を基本一人で管理。とりわけリンゴ栽培は苦労が多く、2週間に1度、250リットルの消毒液をまく作業は重労働。一晩で木全体が病気にかかることがある繊細な果物のため、片時も気が抜けない。毎日、頭も体もフル稼働だ。
青根で炭焼きや薪作りを家業にする家に生まれた高足さん。家には小規模な畑もあった。20代で地元を出てサラリーマンになったが、40代の頃に兼業で米作りを開始。50代後半でリンゴの栽培を始めた。
60歳目前での新たな挑戦だったが、きっかけは至って気軽なこと。親戚に送るリンゴを箱買いしていた際、「自分で作れば良い」と思い立った。「育てるのがこんなに大変なのは後から知った。いつまでも新しいことに挑戦するには知らないで始めるのも良いかもしれない」と大きく笑う。
教育巡り激昂したことも
終始穏やかな様子で取材に応じた高足さんだが、かつて地元の教育を巡って怒りをあらわにしたことがある。少子化が著しい青根に学校がまだあった頃、学校の存在を軽んじるような発言をした人に対して激怒し、衝突したという。「子どもの元気が地域の元気につながる」と力を込める高足さん。子どもとの交流を大切にしている。
30年ほど前から児童へのリンゴ栽培指導を開始。現在は市立青和学園(緑区青野原)の学園生を年に数回受け入れている。子どもたちは農園内の「小学生の木」で果実の袋がけなどを体験し、最後に調理実習をする。
作業のあまりの大変さに、妻からは栽培を反対されることもある。それでも続けるのは、「楽しかった」と言う子どもたちの笑顔があるからだ。以前、自宅の前を通りかかった子どもたちが「宜男さん、何してるかな」と話しているのが聞こえた時は胸が一杯になったという。
元気の秘訣は、考え事をするなど頭を動かすこと。リンゴや野菜の立場になって必要な世話を考え試行錯誤する。「ただ散歩するよりリンゴ畑を歩き回った方が頭を使うんだよ」と明るい笑顔を見せた。
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