市内中町在住の写真家で映画監督の石川梵(ぼん)さんがこのほど、四半世紀追跡した記録をドキュメンタリー映画にまとめた。インドネシア・レンバタ島ラマレラ村の伝統捕鯨を巡る物語「くじらびと」は9月3日(金)から新宿ピカデリーほかで全国公開される。
石川さんは1990年に写真家として独立。祈りをテーマに世界各地で撮影を始め、その時に出会った生存捕鯨の村・ラマレラに魅了されたという。勇敢な漁師が一本の銛(もり)で体長15mにもなるマッコウクジラを仕留める壮絶なドラマがあった。人類に共通する「食べることは命を頂く」ということ。ラマレラ村の家族の在り方や風習、村の絆、縁起を担ぐ文化など、人やモノの考え方は昔の日本に似ている。画像や映像の記録は日本の人たちに知らせることが目的だったが、2010年に村に再訪すると古老から「最近の若者は金や自分のことばかり考え、効率の良い『刺し網漁』しかしなくなっている。村人が一つになっていた古き良き時代の姿を若者たちに見せてやってくれ」との言葉をかけられた。「自分の作品がまさか現地に貢献できるとは」と石川さん。世代を超えて未来の村人たちに映像記録として伝えることが大きな役割だと考えるように。それらの記録は11年に上梓した著書「鯨人(くじらびと)」に収められ、好評を得た。
今回の映画には別の視点、空中からの映像が加わった。それにはドローンの存在が大きいという。これまで、猟を巡る人間の生きざまを撮り、年月を経て成功した水中撮影では追われるクジラの「目」を撮って物語を膨らますことができた。空からだとさらに、海の中のクジラたち全体のドラマが見えると、19年に最後の機会のつもりで臨んだ撮影で「世界を驚かす映像が撮れました」。編集作業やコロナ禍での上映延期を経て、最初の撮影から約30年、ずっと追い続けた貴重な捕鯨ドキュメンタリーがようやく日の目を見る。「21世紀の今でも大海原で命がけでクジラを追っている人々がいる。作品に込めた様々なメッセージを感じてもらえたら」
石川さんは2015年にはネパール大地震の取材・撮影とともに支援を続けた。17年にはその活動をまとめたドキュメンタリーを制作し、初監督作品『世界で一番美しい村』を発表している。2作目の今作を「閉塞感が漂う今の世で、壮大な大海原を観て爽快感を味わってほしい」と話し、多くの人に観てもらえる全国公開を喜ぶ。詳細は「くじらびと」のHPで。
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