町田 社会
公開日:2025.07.31
地獄と化した東京
本紙に託された記録
戦後80年――。戦争の記憶が風化しつつある現代において、三輪町在住の西村元克さん(88)から、壮絶な戦争体験をつづった手記が本紙に寄せられた=写真。
1937年、東京の下町で生を受けた西村さん。5歳で初空襲を体験し、低空で飛ぶ爆撃機と黒煙が目に焼き付いている。通っていた柔道場では、敵兵に向けた「投石」の猛特訓を受けるなど、子どもたちですら戦力として見なされる時代だった。
忘れられない感触
「この世の地獄を見るなんて夢にも思わなかった」。手記の中で多く筆が割かれているのが、東京大空襲だ。一夜で火の海と化した街を、家族とリヤカーで逃げ惑う。人を直撃する焼夷弾、全てを飲み込む火の竜巻。猛火から逃れた後、父親を探しに戻ると、そこは言葉を絶する惨状だった。黒焦げの遺体が至る所に転がり、その1つを踏んでしまった時の感触は今も忘れられないという。終戦後も飢えをしのぐため、焼け跡からお金になるものを拾い 、無法地帯と化した闇市は、子どもでも危険と隣り合わせな状況だったという。
「当時のような時代が再来した時、参考になれば幸いです」と西村さん。「長い歴史の中の流れに対し、こと人間に与えられた生存時間は極めて短い。従って同じ轍を踏む事になるのだろう。一番大事なのは事実の継承と教育が最も有効な手段だと思う」と結ぶ。
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