町田 社会
公開日:2025.07.31
残された戦記、次世代へ
父の思い、一冊に
父親の「声なき声」を一冊の冊子にまとめたのは、込谷れい子さん(75・金森在住)。20年間にわたる母の介護の最中に偶然見つけた父・喜幸さんの戦記。「これは私の責任」と不慣れなパソコンに向き合い、父の達筆な崩し字は、知人らの協力を得て解読した。「1日2時間パソコンに向き合っても、進むのは1ページがやっとでした」と振り返る。
戦記には、1941年の入隊から帰還するまでの約6年間がつづられ、入隊時に抱いた「国家の為に一命を捧げる」という喜びも束の間、新兵時代は日常的に制裁を受け、「顔が腫れていない日は一日も無い」ほどの過酷な教練が続いたとある。
そして、中国大陸での戦闘で目の前で分隊長が心臓を撃ち抜かれ戦死。自身の失敗を泣いて叱ってくれた優しい上官の死に対して、深い悲しみに襲われた様子などがしるされていた。
戦後間もない1948年に壮絶な体験を振り返ってつづられたもので、父の喜び、苦しみ、そして悲しみが克明にしるされ、込谷さん自身も断片的にしか知らなかった父の姿があったという。
2019年に完成した冊子は100部印刷し、近隣の小中学校や知人らに配布した。「青春を戦争に奪われた父の無念を思うと、この戦記を誰かに見てほしかったのだろうと感じます」。込谷さんは、若い世代に読んでほしいと願う。「2度と戦争はしてはいけない、ということを伝えたい」
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