八王子市工芸品「東京こけし」を手掛ける 大蔵 國宜さん 元横山町在住 77歳
唯一の職人 二人三脚で
○⋯「仕事はこけしづくり。趣味もこけしづくり」。都内唯一の「職人」、この道60年のベテランは笑顔をこぼす。手掛けるこけしは、胴体と頭に特徴的な丸みがあり、首には「幸せの輪」という名のリングがついている。「ならでは」の形に、近年では外国人が直接工場へ買いに訪れることも少なくないそう。「出来上がりを見て、目を丸くして喜んでもらえることが嬉しい」。毎日朝9時から、工場で黙々と木を削る。
○⋯木工工場の2代目に生まれ、15歳からは他県の製作所で修業をした。30 歳半ばで右足の大けがをしおよそ3年間、松葉杖の生活を送ったことがある。それでも仲間に誘われると、杖をつきながら全国各地に観光へ。妻昌子さんは「夜になるといつもどこで遊んでいるのか、家中大騒ぎだった」と振り返る。仲間に囲まれるタイプで、「昔いじめられっ子だったせいか、どんな頼みも一生懸命に応えるからかな」とはにかむ。
○…足が治った頃には産業自体の衰退とともに仕事は減っていた。転機となったのは木材のPRのため木を削る実演を依頼されたこと。初めは「太鼓のばち」のようなシンプルなものを作っていたが、楽しませたいと「こけし」などのオーダーも受けるように。その流れでオリジナルの制作を開始。およそ15年間かかり現在の形になってからは多くの取材を受けるほど著名になった。
○⋯絵付けは昌子さんが担当する。一度他人に頼んだことがあったが、「違うこけしになってしまった」そう。完成まで二人三脚だ。花が好きで、春になると一緒に外へ出かける。桜の見える公園をいくつもはしごする年もあるという。「2人でできる限りは続ける」。あのやさしい丸みは2人の人柄のよう。
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2021年1月14日号