地域に届け 情熱の太鼓

　○…「想像していた以上に足を止めてくれる人がいて、あらためて太鼓の持つ『人を惹きつける力』を思い知った」。西放射線ユーロード沿いの公園で開いたライブに手応えを感じた。中学・高校時代の仲間と昨年夏に立ち上げた太鼓チーム。これまではつながりのある自治会や保育園などで演奏してきたが、今回は一からの交渉。「祭りではない、日常の中で生の太鼓の音を聞いてもらうことで街を盛り上げ、より多くの人に太鼓の魅力を伝えたい」。その熱意が市や商店街に届いた。

　○…館町出身。中学１年の時、部活のオリエンテーションで太鼓部が披露した数分間の演奏に心を奪われた。即入部を決断し、それからは太鼓漬けの日々。顧問や仲間にも恵まれてめきめきと上達し、高校では太鼓部の部長を務めて都大会、全国大会で頂点に輝いた。周囲が受験勉強に取り組む中で「太鼓のプロになりたい」という思いが強くなり、悩んだ末に自分の意思を信じて世界的な太鼓芸能集団「鼓童」の研修所に飛び込んだ。

　○…新潟県佐渡島にある研修所で太鼓の修業に明け暮れたが、そこは厳しく狭き門。１年後に退所し、実家で家業を手伝った。くすぶる思いを抱えて３年、同期の活躍を聞いたことや友人の勧めもあり「やっぱり太鼓をやりたい」と再始動。情熱を同じくする仲間とはちはちを結成し、活動と生活の両立を模索中。個人では縁あって大河ドラマ『べらぼう』に太鼓演奏役で出演した。

　○…「自分にない発想が生まれる」ことから、人と話すことが好き。一方で毎日の風呂や休日に登る高尾山でゆっくりと考えをまとめる時間を大切にしている。「お客さんと通じ合えるような、寄り添う太鼓を叩きたい。太鼓経験のない人にもファンを増やせれば」