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多摩版 公開:2021年1月1日 エリアトップへ

新春インタビュー 地域共生社会への一歩を 阿部市長、抱負を語る

政治

公開:2021年1月1日

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インタビューに答える阿部市長
インタビューに答える阿部市長

 2021年の幕開けにあたり、本紙では阿部裕行多摩市長に新春インタビューを行った。阿部市長は、新型コロナウイルスに見舞われた昨年1年間の取り組みを振り返るとともに、市制50周年を迎える新年度に予定している施策や、庁舎問題などについて言及した。(聞き手=本紙・中島崇雄)

  --まずコロナで揺れた昨年1年を振り返っての感想をお願いします。

 「昨年は当初、いよいよオリンピック・パラリンピックを迎えられるなという思いでした。まさか延期になるとは思ってもいませんでしたし、年初には想定していなかったことが起きてしまったなと思いました。

 新型コロナウィルスについて言えば、1月の春節で中国からの訪日客が多くなる頃には、多摩市医師会の会長をはじめ、日医大多摩永山病院、多摩南部地域病院の病院長たちの間では、これは大変なことになるのではないかという話になっていました。そして1月28日に国が政令で新型コロナウイルス感染症を2類相当の指定感染症に位置付けたことで、状況は一変し、患者は原則、感染症指定医療機関の感染症病床に入院させることになりましたが、現実には、市内の医療関係者たちも新型コロナウイルス騒動に巻き込まれていくことになります。

 当時、多摩地域で患者を受け入れられる感染症指定医療機関はかなり限られていました。ところがダイヤモンド・プリンセス号の時にどんどん患者が増えていき、PCR検査で陽性だとされた方を神奈川県内はもちろん、東京都の指定医療機関だけでも受け入れができなくなった。そして指定医療機関以外のところでもとなった時に備え、準備を進めていたのが日医大多摩永山病院で、ニュース番組でも紹介されていました。その頃から、だんだん市民の間にも感染症に対する恐怖が広がり始め、2月から3月にかけては、医師会などと連携しながら発熱外来を設けるかどうか議論をはじめ、最終的にドライブスルー方式のPCR検査センターを立ち上げることができたのは、5月の連休明けでした。保健所を設置していない自治体としては、都内で初めてPCR検査センターを立ち上げることができたことは、思えば春節の頃に危機感を持って話をしていたことが奏功したのだと思います。そういったことも含め、とにかく新型コロナウイルスに翻弄された1年だったなと思います」

正しい情報の発信

 --コロナに関しては多摩市独自の支援策も展開されました。その中で、成果や見えた課題はありますでしょうか。

 「私が一番、筋として通さなければいけないと思ったのは、正しく恐れるためにも情報が必要であるということ。情報をきちんと市民に伝えていかなければということです。感染者が確認されたという情報は、医療機関から最寄りの保健所に届け出がされ、東京都に集約されますが、保健所を自ら設置していない多摩市の保健所業務は、日野・多摩・稲城3市を管轄している東京都の南多摩保健所が担っています。当初は東京都も保健所も混乱していましたから、都が出すその日の感染者数でも自治体ごとの内訳がも出てこなかったため正直苦慮しました。ただ、保健所がない自治体として声を上げ、東京都もその声に耳を傾けていただいた結果、昨年9月8日からは週報という形で、人数だけでなく、年代や入退院、属性の情報が出てくるようになり、市としてもホームページ等でお知らせすることができるようになったことはひとつの成果かなと思っています。

 たま広報をはじめ公共施設等で掲示するかわら版の発行、私自身も4月から8月頃まで毎週動画メッセージを配信し、コロナが今どういう状況にあるのか、国や都の動向、多摩市としての独自策、小中学校が再開した後の子どもたちの状況といった、できるだけホットな話題を正しく伝えようと努力してきました。

市民の命、くらしを守る市政を「子ども・若者条例」「庁舎問題」などに言及

 国からも交付金等が出てくるようになりましたが、多摩市としては、厳しい立場に立たされる皆さんを救っていかなければならないと考えました。ひとり親世帯への5万円の給付や、2カ月分の下水道使用料の実質無料化、学校の一斉休校中には、家庭での学習を支援するため、eラーニングによる学習機会の試行提供なども行いました。緊急事態宣言後は、保育園の臨時休園や、公園遊具の封鎖をするかどうかを対策本部会議などで議論しました。

 それらを通して見えてきた課題もあります。特別定額給付金については、オンライン申請と郵送申請の処理ルートを分けることによって、オンライン申請の受付を停止・中止することなく対応ができました。デジタル化といっても、パンデミックという状況下で市民サービスを行うことを想定していなかったので、基礎自治体にしわ寄せをされた形で市民の皆さんと向き合わなければならなくなったことは大きな教訓です。市内に事業所を構える事業者と連携して、自分の申請の処理がどこまで進んでいるかをオンラインで確認いただけるシステムも導入しましたが、一気に申請があったことによって、長くお待たせしてしまう時期もあり、いかにスムーズに対応できるかが課題として残りました。

 商工業への支援、公共施設の開閉など、皆さんの活動を出来るだけ制限することがないように砕身してきました。ご高齢の方は、外に出掛ける頻度が少なくなることで、フレイル予防ができなくなったり、認知症が増えていく原因になったりと健康二次被害もあったのかなと思います。そうした中、ユーチューブの多摩市公式チャンネルで児童館の職員が子ども向けの歌や踊り、遊びをご家庭の皆さんと一緒にできるような動画、健康福祉部などが家でもできるフレイル予防体操などの配信といった試みを行ってきました。市民の皆さんそれぞれに寄り添うようにしてきましたが、必ずしもパーフェクトにできたわけではありません。こうした1つひとつを100年に一度の教訓として、コロナ禍でまだまだ先が見えない事もありますが、しっかり対応していこうと思っています」

 ーその中で気候非常事態宣言、障がい者差別解消の条例制定などの取り組みもありました。

 「6月議会で都内初の『多摩市気候非常事態宣言』を議決していただきました。議会から出た使い捨てプラスチック、生物多様性といった内容を盛り込み、全国の自治体の中でも稀有なケースとして、議会と共同で打ち出すことができたことは非常に良かったと思います。『多摩市障がい者への差別をなくし共に安心して暮らすことのできるまちづくり条例』も全会一致で可決していただきました。ともに市民向けの公開イベントやシンポジウムなどを考えていましたが、コロナ禍でできなくなったのは残念でした。

 また、新しい日常に対応しようということでは、健幸まちづくりシンポジウムや市制施行50周年記念のプレ事業である多摩市オンライン文化祭などで、オンラインでの動画配信を行いました。健幸まちづくりシンポジウムは、テレワークが日常となったことで多摩市に住まわれた方、多摩で10年位働いている方に集まっていただき配信できたことは大きな成果でした。

 また、オンライン文化祭は、50団体以上、延べ1千人を上回る皆さんに出演いただき、発表の場を失くした小中学校の子どもたちや市民団体、市内の大学生たちにその場を提供することができました。一例を紹介すると、多摩センターのイルミネーションの点灯では、子どもたちや10館の児童館が連携し、バーチャルとリアルのドミノ倒しをつないで灯りを点すことができました。多摩川河川敷の一ノ宮公園では、「せいせきみらいフェスティバル」の皆さんと連携し、75発のサプライズ花火をリアルに打ち上げることができました。なおかつ視聴者が約2万2千あったということで、初の試みながら多くの皆さんに観てもらうことができました」

 ー新年度の予算編成や重点政策についてもお聞かせください。

 「まず、基礎自治体としては、新年度に入る前の2、3月には、市民の皆さんが安心して新型コロナワクチンを接種できる環境づくりのために動くことになっていくかと思います。その前提として、政府によるワクチンの薬事承認はもちろん、安全性等の説明、場合によっての副反応等による健康被害救済や相談体制等の対策もきちんと取れる環境かがあります。

 新年度について言えば、オリンピック・パラリンピックが形はともかくとして開催でき、自転車競技ロードレース、アイスランドの選手の皆さんを応援することで、夢が実現できる年になればなと思います。市制施行50周年、多摩ニュータウンの諏訪・永山団地での第1次入居以来50年でもありますので、市民の皆さんと明るく良い年にしたいと思っています。

 『子ども・若者条例』は昨年から検討がスタートしています。子どもたちや若い人たちが、未来を夢見て希望を持ち、羽ばたけるようになるためにも、大人の責務として、子ども・若者を応援する、支援する、誰一人取り残さないことを大事にした条例にしていきたいなと思っています。

 庁舎問題は、これまでどこに建てるかが大きな話題でした。ただ、すべてができるわけではありませんが、コロナ禍で見えた課題、例えば押印の必要もなく、市役所に来なくてもオンライン上で手続きができるなどの積み重ねによっても庁舎の在り方も変わってくると思いますので、時間をかけて議論できる年にしたいと思います。

 (仮称)地域委員会構想については、昨年から市民の皆さんとワークショップなども展開しています。東寺方小学区と諏訪中学区の地域の皆さんにご協力いただき、エリアミーティングをスタートしました。それらを踏まえ、今年、地域委員会構想や地域包括ケア、健幸まちづくりを含めて、地域共生社会の実現を見据えながら、一歩一歩、行政と地域の在り方などについても取り組んでいく年にしていきたいと思っています」

 ー最後に市民の皆さんへメッセージをお願いします

 「新しい年になりましたが、コロナだけでなく、地球温暖化に伴う災害などもない1年をと思いますが、どうしても想定外のことが起きる可能性もあると思います。そうした時に、しっかり市民の命やくらしを守るための市政を動かしていきたいと思いますし、市民の皆さんにはコロナでも学んだように、手洗い、マスク直用、3密を避けることと併せて、いざ災害が起きた時にもしっかり助け合うことができるように取り組んでいただきたいと思っています。

 自殺率などをみても、若い方や頑張って働いている方を含めて弱いところにしわ寄せがきているように思います。行政としても目配りしていきますので、くれぐれもご自身の命、健康に気を遣っていただきたいと思います。ご高齢の方は、新しい日常の中で歩くことやフレイル予防など、家の内外で体を動かし、健康な生活をぜひ心掛けていただきたいと思います。

 景気動向は相当厳しさを増し、生活や仕事が厳しくなる方もいらっしゃると思いますが、夢や希望を失わず、いざという時にはセーフティネットとしての行政にご相談していただければと思っています。今年1年、コロナがこれ以上広がらないことを期待してやみませんし、地球温暖化も何とか収まってくれればと思いますが、現実はもっと厳しいでしょうから、市民の皆さんと一緒に頑張って取り組んでいきたいと思います。

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