大和 人物風土記
公開日:2022.03.04
関東唯一の大仏師で3月13日から10数年ぶりに個展を開く
坂井 淨雲(じょううん)さん(本名:坂井 淨(きよし)さん)
下鶴間在住 71歳
衰えない創作の熱意
○...本格的な個展は10年以上ぶり。仏師の先輩との2人展に感慨もひとしおの様子。会場には新作を含め「優しい顔が特長」といわれる仏像約20点が展示される。
○...東京の生まれ。元々絵を描くのが好きだった青年は、デパートなど商業ディスプレイなどを請け負う会社にアルバイを経て就職する。時代は高度経済成長真っ只中。「景気もよくてめちゃくちゃ忙しかった」と振り返る。多忙な日々を癒したのが、古都の風景。京都や奈良へ旅行に行くのが楽しみだった。「修学旅行の時はそんなこと思わなかったのにね」と笑う。安い旅館に逗留し、寺社をめぐるうち仏像に魅了された。「絵では感じなかったキレイとか美しいを超えた心に直接響くものを感じた」。一念発起し、会社を退社。仏師を目指し、最初は独学で仏像彫刻を開始する。その後、高村光雲氏の孫弟子にあたる中村祥雲氏に師事を受け、5年後独立を許された。
○...妻の実家のある海老名市に工房を構え、行政やカルチャースクールから彫刻教室の講師の仕事を引き受けて生計を立てた。大和に来たのは25年ほど前。「住居街で大きな機械式鋸の音がうるさくて...」と、今は工房を千葉県に移し、制作にふける。法泉寺(藤沢)の本尊を依頼されて以降、地元でも観音寺(大和)の阿弥陀如来像や礼正寺(綾瀬)の親鸞聖人などを手がけ、2008年には「関東で唯一」の大仏師の称号を得た。
○...今では県内を中心に土日は仏像の彫刻教室でびっしり。「色々な人と出会えるのが楽しい」と笑顔。「コツコツ積み重ねて続けてきた50年。よくやって来れたと思う」としみじみ。それでも「今でも『もっと、もっと』と思う」。創作意欲は衰えを知らない。
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