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厚木・愛川・清川 人物風土記

公開日:2017.12.15

四肢まひの障がいを持ちながら創作活動を行う
赤瀬 陽久(はるひさ)さん
温水西在住 53歳

絵筆は駆ける、自由な世界を

 ○…「名前とは関係なく赤が好きやねん」。出身の大阪訛りが残る口調で、ジャンパーと靴の色がお揃いだったことに気付いた。上着を脱いで撮影を、と後ろにまわるとちょこんと細い三つ編みが1本。「見た目で目指すのは芸術家。髪の毛はヘルパーさんにカットしてもらうねん」と、茶目っ気たっぷりに笑った。

 ○…大阪府柏原市の出身。人見知りでおとなしい3人兄弟の末っ子は、「まるで三国志の世界のように」自然豊かな景色が広がる故郷で、元気いっぱいに育った。中学では柔道部に、高校では当時流行のドラマに影響されて、ラグビー部に入部。1年時の合宿中、頚髄損傷の事故にあう。「目が覚めたら、先生から『君の体はもう動かない』って言われてん。関節だけは固まらないように動かそうな、って」。窓から望む竹田城址を前に、自分では動かせなくなった手足が元の通りに動く夢を、何度見たか。夢と分かっても絶望は無く、奇跡を信じ続けた。10年ほどして、「この体が自分やから」という結論に達した。

 ○…入院生活は1年半に及び、高校は2年時に中退。資格を取って働きたい、と簿記の勉強を始めた。テキストを読み、覚えることをノートに書く、の繰り返しで3級から1級まではスムーズに合格。会計事務所を目標に試験を受け続けるも、5年頑張ったところで断念。36歳の時に、家族とともに厚木に居を移した。 ○…入院中から、手を動かす訓練の一環で描いていた絵がライフワークとなった。観てもらう喜びを知り、厚木はもちろん大阪や相模原などでも個展を開いてきた。「自分が死んでも絵は残り、心の中で生き続けるもんね」と、気持ちが乗っているときには、キャンパスの上を走る筆の勢いが止まることはない。作品を展示してくれそうなカフェやギャラリーを、インターネットで見つけては自ら交渉に出向く。きょう15日(金)まで、厚木市役所の1階ロビーで14点を展示中だ。

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