逗子フェアトレードタウンの会の代表理事を務める 長坂 寿久さん 逗子市小坪在住 74歳
相互扶助のまちづくりを
○…「これからがスタート。市民が中心となって、活動を継続させていけるかにかかっている」。開発途上国の製品や農産物を適正な価格で取引する「フェアトレード」(公正貿易)。先ごろ、市長の宣言を受け、まちぐるみで応援する「フェアトレードタウン」への申請を行った。認定されれば全国で3番目、関東では初の認定都市が誕生する。
○…20年以上、研究に情熱を傾けてきたフェアトレードの第一人者。3年前までは国際関係論を専門に拓殖大学で教鞭をとった。きっかけは日本貿易振興機構(ジェトロ)に勤め、駐在員としてオランダにいたときのこと。当時欧州で広まりつつあった新たな貿易の仕組みに感銘を受け、「日本に持ち帰ろう」と考えた。だが当時の日本では言葉すらまだ認知されていなかった時分。帰国後、周囲に話しても理解されず「投資やセールスと勘違いされたこともあった」と笑う。その後、各地に散在していた関係団体を集め、勉強会や市場調査を行いながら地道に普及の礎を築いていった。
○…「仕事だけでなく、一人の人間として社会と関わり続ける」が学生時代からのモットー。ボーイスカウトやボランティア活動に励み、勤めてからも多忙な合間をぬって海外の障がい者就労施設を見学するなど、見識を広げた。そこで積み重ねた経験が「自分の生き方の基礎になっている気がする」と目を細める。
○…開発国の生産者を支援し、貧困による格差を改善することがフェアトレードの第一義。ただ「一方的な支援ではない」とも強調する。商品の先にある、生産者の実情を慮(おもんぱか)ることは「他者を思いやること」と同義だ。「つまりは相互扶助の精神。まちぐるみで取り組むことは、互いが互いを思いやるまちづくりへの回帰になる。フェアトレードはそのツールなのです」。少子高齢化が加速する中、相互扶助の精神は不可欠。より住みやすい逗子が、その先にあると信じている。
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