逗子市が「これからの地域医療を考える〜地域医療の現状と逗子市に必要な地域医療とは〜」と題したシンポジウムを7月24日、逗子市役所で開催した。長年取り組む「総合的病院の誘致」について、専門家を呼んで改めて考える催しで、出席した市民からは話し合いの場の継続を求める声が上がった。
逗子市は2020月7月、医療法人社団葵会と進めていた総合的病院誘致計画を断念した。その後、「医師会や市民らと話し合いの場を設けて改めてこれからについて考えたい」(桐ケ谷覚市長)としていたが、コロナ禍でようやく開催にこぎつけた。
当日は約30人が参加。講演者とコーディネーターに地域医療の専門家で「おうち診療所目黒」の伴正海院長が登壇した。伴さんは横浜市立大学医学部卒業後、高知医療センターに勤務。その後、地域によって運ばれてくる救急患者の状態に「濃淡」があることに興味を持ち、現地の関係機関における連携が特にうまく機能していた梼原町に赴任。中山間地域における総合診療医としてへき地医療に従事した。
その後、「梼原町モデル」を広めようと高知県庁において医療提供体制の構築に携わったほか、厚生労働省では、国の地域医療構想や医療計画の策定に従事した。
「医療ニーズ捉えて」
伴さんはまず、「総合病院」という分類自体が法律上、1996年になくなったことを紹介し、医療ニーズを測る難しさを指摘した。一般的に将来への不安などから「総合デパートのような大病院」を欲しがる傾向があるものの、人口減少や少子高齢化、医療の高度化などに伴い、高度急性期や急性期といった、高度な医療資源が必要となる患者は減少傾向にあることを紹介。今後は神奈川県を含めた都市部で回復期や慢性期のニーズが高まるため、社会変化に合わせて医療ニーズを読む必要があるとした。
顔の見える関係
自身が赴任した梼原町では行政や社会福祉協議会、医療機関らの連携が緊密で、患者の顔が見える関係ができていたという。「いかに必要な人に適切なケアや医療を提供するかに加え、病院を離れた後に住み慣れた地でマイペースに暮らせるかが大切」とした。
また、逗子市の医療需要について、入院患者は2025年をピークに減少傾向になると説明。いずれも予防や重症化予防が効果を発揮する脳梗塞や心不全、肺や胃、大腸のがんや骨折、肺炎等の疾患が多い傾向は変わらないという。近隣には湘南鎌倉病院や横須賀共済病院といった「日本屈指の救急病院」が存在することを踏まえ、「必要とされているのは高度急性期の医療なのか、日常に近い場面で困りごとに対応できる面倒見の良いオーダーメード型の医療なのか」と会場に問いかけた。
逗葉医師会の田嶋博雄会長は今年7月に実施した在宅医療に関するアンケート結果について発表。桐ケ谷市長は「ここが出発点。皆さんと考えていきたい」とした。参加した市民からは継続的な開催を求める声が上がり、第2回の開催も検討していくという。
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