逗子・葉山 社会
公開日:2026.10.23
葉山町在住 松野泰夫さん 96歳、雀卓に返り咲く 巨泉も学んだ「美学」
ジャラジャラ、カツッ…。「リーチ」--。逗子市福祉会館の2階、認知症予防や市民の健康増進に取り組む「健康麻雀ポンポン倶楽部」の会場。ここで一際異彩を放つのが、戦後の”麻雀黎明期”を軽やかに渡り歩いた熟練の打ち手、松野泰夫さんだ。11月には97歳を迎えるが、その眼光は鋭く、手つきには迷いがない。
麻雀を覚えたのは早稲田大学へ進学する前。友人に誘われて虜になり、大学時代は教科書も持たずに連日雀荘へ通い詰めた。「渋谷や新宿、恵比寿の雀荘を“道場破り”的に渡り歩いていたね」と懐かしむ。
のちに深夜帯のバラエティー番組『11PM』などで麻雀ブームを牽引した大橋巨泉氏は大学時、松野さんの卓の後ろで「勉強させてください」と熱心に打ち筋を観察していたという。「だから彼の麻雀技術は私流だね」と悪戯っぽく微笑む。
長男だったこともあり、大学卒業後は、当時は賭け要素が強かった麻雀の世界とキッパリ縁を切り就職。得意の英語を生かし、進駐軍専門ホテルのフロントや外国船の入出港管理、75歳まで勤めた米海軍基地内での工事会社の通訳などの仕事に従事してきた。
観察するんだよ
長年親しんだ麻雀から長く離れていた松野さんだが、数年前に再び雀卓へ帰ってきた。長年の経験から培われた独自の「流儀」とともに。
牌の種類ごとに手元で並び替える「理牌(りーぱい)」をあえてしない。「手配の組み合わせは全部頭の中に入っているから。手元を整理する時間があるなら、相手の表情や動きを見る」。勝ち負けや早上がりだけに固執せず、相手の狙いを読み、美しい手役を狙い定める-。それこそが松野さんの追い求める麻雀の美学だ。
現在は「肺気腫」を患い、外出時は携帯用酸素ボンベが欠かせない。それでも週に2〜3回、笑顔で雀卓を囲む。「家では妻が温かいご飯を作って待っていてくれる。ありがたいね」。最愛の妻の支えを受けながら、趣味を粋に楽しむ日々だ。
「勝ち負けじゃない。どれだけ”読めたか”を楽しんでいるんだよ」。熟練の洞察力と美学を胸に、松野さんは今日も雀卓に向かっている。
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