西北部活性化
「自然豊かで魅力ある土地だと思う。でも、何もない。市の施策を見ても南部ばかりが優遇されている印象だ」
遠藤地区で農業を営む60代の男性が不満を口にする。
豊かな緑地と田園風景が広がり、晴れた日には雄大な富士山が眺望できる同地区。恵まれた自然環境に加え、慶応大湘南藤沢キャンパス(SFC)や病院、起業家育成施設の「慶應藤沢イノベーションビレッジ(SFC―IV)」が立地するなど研究開発機能の形成も進んでいる。
ただ、市全体に視点を移せば、藤沢駅周辺の再整備や辻堂地区の大型商業施設を中心とした賑わいと人口増、村岡新駅(仮称)の設置など新たなまちづくりが進む。男性の目にそれは、「南部の出来事」と映る。
「高齢化が進み、農家も年々減っている。いくら南が栄えても、自分たちが未来を描けない」と嘆く。
そんな同地区の悲願が、湘南台と寒川町倉見とをつなぐ相鉄いずみ野線延伸による新駅の誘致だ。
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市などはSFCに隣接する約36haの地域を対象にした「健康と文化の森地区」への誘致を想定しており、構想の事業化を巡っては昨年4月、地権者から成る区画整理事業の準備会が業務代行者予定者を選定。2023年度末までの市街化区域編入と組合設立の認可を目指しており、地元の機運も高まりつつある。
整備事業は新たな産業拠点の創出を目指す「新産業の森」(約110ha)の整備事業と並び、市西北部地区の都市基盤形成における柱の一つだ。男性は「反対意見もあるが、駅ができれば交通の便が良くなり賑わいが生まれる。他の北部地域への波及効果もあるはずだ」と期待する。
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西北部地区の活性化を望む声は多く、市民レベルでの模索も続く。市内で造園業を営む冨田改さん(78)は豊かな自然環境と景観を後世に残そうと、長年にわたって活動を続けてきた。
15年、遠藤地区に約130種類の山野草が鑑賞できる「遠藤まほろばの里 藤沢えびね・やまゆり園」を開園。シーズン中はコロナ禍でも3千人近くが訪れる名所の一つになった。18年には国の特区制度を活用し、地産の新鮮な野菜を使った料理を提供する農家レストランも開業。いずれも地区の魅力を観光客に周遊しながら体験してもらおうとの発想からだった。
農家を元気にし、農業を基軸にしたまちおこしを―。そんな理想を描く冨田さんも北部の活性化に向けた具体策が必要と感じている。その上で、こう注文をつけた。
「南の方のまちづくりの形態を真似しないこと。北の特長を生かしたこの地域ならではの発想が必要だ」
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任期満了に伴う藤沢市長選が2月11日に告示される。現職と新人の計3氏が出馬表明し選挙戦の構図がほぼ固まった。市の課題を検証する。
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