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鎌倉 社会

公開日:2025.07.18

鎌倉市医師会
ハラスメント対策で陳情
「在宅医療・介護の従事者守って」

  • アンケートを解説する宮下副会長

 社会の高齢化によってニーズが高まる在宅医療・介護。その現場で、看護師やヘルパーなどへのハラスメント被害が増加している。これを受けて、鎌倉市医師会など関係8団体が鎌倉市議会6月定例会に陳情を提出。同月27日に総員賛成で採択された。在宅医療・介護でのハラスメント実態調査のアンケートを担当した、鎌倉市医師会の宮下明副会長に話を聞いた。

氷山の一角

 「在宅医療・介護の利用者や家族の多くは暴力やハラスメントとは無縁ですが、心ない人の行為で医療従事者が安心して業務に取り組めない現状は看過できない」と宮下副会長は現状を訴える。

 在宅医療・介護の現場では、2022年に埼玉県で医師が殺害される事件が発生し、従事者の安全確保の重要性を浮き彫りにした。25年には、大阪府で訪問看護師が男性に刃物で切りつけられる事件も発生している。

 このような状況で、鎌倉市内での実態を知るため鎌倉市在宅医療・介護連携相談センターが23年8月に市内訪問系サービス事業者721カ所に対してアンケートを実施。この回答では、叩かれるなどの身体的暴力が22%、暴言などの精神的暴力が44%、性的ハラスメントが43%と高い割合での被害が報告された。宮下副会長は「被害にあっても相談できない人もいる。これらの回答は氷山の一角」とし、「従事者が減少してしまうと、訪問医療・介護が維持できなくなる可能性もある」と警鐘を鳴らす。

 この結果を受けて、市内事業者向けの研修会なども開催してきたが、より踏み込んだ対策の必要性から、市医師会が関係団体と連携し市議会へ陳情を提出した。

相談窓口の強化を

 陳情では、ハラスメントに関する相談窓口の設置、被害を受けた従事者への心的・法的な支援体制の構築、必要に応じた複数名訪問や緊急時の連絡体制強化、情報共有、ハラスメント対策の窓口一本化などを訴える。

 特に相談窓口の強化については、「相談しても上司が『それはハラスメントではなくスキンシップ』『うまくやって』などと被害に向き合わず、従事者が我慢するケースもあり、外部に相談できる窓口が必要」と宮下副会長は訴える。

 また、従事者が1人で訪問することが多いことから、複数人で訪問できる体制強化補助の必要性や、ハラスメント対策マニュアル策定など「他市での先進事例を導入することも重要」だと話す。

行政と連携

 今回の陳情が採択されたことで、鎌倉市もハラスメント対策の強化に取り組む。

 市介護保険課によると、法的・心的な相談を求める声が多いことから、専門人材を確保して市在宅医療・介護連携相談センターの機能強化を図るほか、相談窓口の周知、事業者向けの研修会の拡充などを検討しているという。

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