茅ヶ崎・寒川 人物風土記
公開日:2025.10.24
「組紐工房偕可園」の4代目で、2025年度茅ヶ崎市技能者表彰を受賞した
児島 有子さん
茅ヶ崎市南湖在住 75歳
「制作中に力尽きたら本望」
○…染色された複数の糸を組み上げて制作し、帯どめなどとして利用される日本の伝統工芸「組紐」。「組紐工房偕可園」(茅ヶ崎市南湖)の4代目として、技術の伝承に力を注ぐ。長年にわたる功績とその職種の向上、発展に寄与したことが認められ、このほど茅ヶ崎市技能者表彰を受賞した。「身の引き締まる思い」と胸の内を明かす。
○…3人きょうだいの末っ子として、茅ヶ崎で生まれ育つ。「偕可園」は昭和8年創業の組紐工房で、初代の遠縁だった母が2代目として受け継いでいた。高校卒業後はデザイン学校で学ぶ。そこで「モノづくりの難しさ」を実感したことから工房を継ぐ決心が固まり、40歳の時、姉・敬子さんから継承する形で4代目に。現在は主に姉がデザインを担い、自身がそれをかたちにしていく。「大切にしているのは『面白さ』や『遊び心』」。生み出された創造性の高い作品は品評会などでも数々の賞を受賞するなど高い評価を受けてきた。「感覚を大事にして、常に研究を続けてきた結果」と振り返る。
○…デパートでの展示会などで全国を飛び回る。その際、地元のおいしいものを食べて、町の食文化を学ぶことが楽しみだ。「食べ物を通じて、その土地の良さを知ることができる。それがデザインや色に生かされることもあるの」と目を細める。
○…現在、工房には40代から80代の職人たちが15人いるが、明確な後継者はいない。それでも、「将来的には複数人で作業を分担して、それぞれの得意分野を生かす『組紐制作集団』として、この貴重な技術を後世に残していけないか」と模索する。「組紐を作ることは生きる喜び。命ある限りずっと続けたい。制作中に死ぬことができたら本望ね」
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