緊急事態宣言が解除されおよそ1カ月。神奈川県内の感染者数は低水準で推移し、19日には飲食店などの時短営業を解除する「ステップ2」に移行した。ただ今後、感染の第2波、3波が起きるとの予測もある。これまでの県の取り組みや求められる新たな生活様式などについて、新型コロナウイルス感染症県対策本部 医療危機対策統括官の阿南英明医師に話を聞いた。
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――県内の感染状況はいかがでしょうか。
「5、6月の新規感染者はほぼ一桁台で推移しており、何とか抑え込めている状況が続いています。また重症、中等症、軽症で入院している患者さんもピーク時は400人近くいましたが、100人を切りました」
――県の「神奈川モデル」について。重点医療機関の設置など、症状に応じて対応を分類する医療体制です。発案者として評価は。
「実現には医療機関の役割分担が求められ、多くのご理解と協力があって急ピッチで骨格を作ることができました。なぜこのような体制が必要だったのか。最も警戒すべきだったのは、コロナ対応で手が回らなくなり、医療機関が立ち行かなくなること。がんや慢性疾患など圧倒的多数を占める病気もあれば、心筋梗塞や脳卒中だって起きる。いかにコロナ禍とは言え、これらは絶対におろそかにしてはならない。これが神奈川モデルを作ったときの最大の理念です。医療崩壊を未然に防ぐことができたという意味では、合格点だったと思っています」
――ダイヤモンド・プリンセス号の対応にDMAT(災害派遣医療チーム)調整本部長として対応にあたった経緯もあります。
「医療現場では特にコロナの軽症者への対応が負担だった。法律の規定上、無自覚であっても患者さんを入院させなければならなかったからです。結局病床が足りず、対応終盤では大阪や宮城まで搬送したケースもあった。このことから神奈川モデルでは軽症者は最初から入院の対象としない仕組みを作りました」
――今後の課題は。
「一つは感染が落ち着いた今の現状をいかに維持するかです。第2波はほぼ間違いなく来るでしょう。再び患者が急増したときにいち早く察知し、次の対策が打てるか。また状況に合わせ、柔軟な体制が敷けるかは対策本部としての課題でもあります。一方、県民や事業者に向けて感染症対策の啓発や仕組みの推進など地道な対策も続けていかなくてはなりません」
コロナとの「付き合い方」
――地域社会に求められる新しい生活様式について。
「念頭にしなければいけないのは『withコロナ』は続くということ。前の暮らしに戻りたいと思うかもしれないが、戻っちゃいけない。元の生活に戻る際に生じる『隙』は感染が再び拡大する契機になるからです。飲み会や歓送迎会もやりたいかもしれません。でも、そうした文化は残念ながら放棄しなくてはいけない。少なくとも2、3年の間は。また食事を提供するお店側も、感染対策について顧客のニーズを満たす対応が求められます」
――最後に県民、市民へのメッセージをお願いします。
「コロナを”敵視”するのはやめましょう。排除し、封じ込めるという発想はウイルスが侵入した初期にこそ有効ですが、今後は『いかに上手に付き合っていくか』という発想が必要になります。右も左もコロナウイルスがいるのは仕方がない。自分や周りの大切な人が『感染しない、させない社会』を当たり前にする。これができない限り、コロナと付き合っていくことはできません。今求められるのは新しい社会の形を追求していくことです」
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