新型コロナウイルス拡大の影響で今春の選抜大会に続き、8月10日から阪神甲子園球場で開催が予定されていた第102回全国高校野球選手権大会と出場権をかけた地方大会の中止が決まったことを受け、横浜高校硬式野球部・渡辺元智元監督(松田町出身)が本紙を通して高校生にメッセージを送った。
横浜高校硬式野球部を率いて半世紀。甲子園通算51勝を挙げ、5度の全国制覇に導いた渡辺元監督。退任後の現在は出身地である松田町のふるさと大使も務める渡辺さんが地元神奈川の高校球児に思いを込めた。
「苦しい状況だが、決して諦めないでほしい」
「大会中止の決定を耳にしたとき言葉にならず、奈落の底に突き落とされた思いになった」と振り返る渡辺さん。これまで半世紀以上野球に携わる中で、自身も歴史上の偉人や監督、先輩たちからの言葉に幾度となく救われ、立ち上がってきたというが「今回はその言葉が見つからない事態」と表現した。
しかし、中止の発表から数日経ち、冷静になった今、新型コロナウイルスという戦後最大の「国難」を乗り切る姿勢を問いかけ「目標にしてきた甲子園がなくなってしまい、高校生たちは困惑を隠せないと思う。だが、決して諦めないでほしい」とおもんぱかった。
「誰もが経験したことのないこの現実は変えられない」とした上で、「この状況を乗り切るには第一に指導者であり大人の存在が大切」と話す。渡辺さんは現実を簡単には受け入れられない球児たちに「日頃、親以上の時間を過ごし、真剣に子どもたちと向き合う指導者の存在が大きい。『愛情が人を動かす』という言葉の通り指導者の方々はこれまで以上に愛情を注ぎ、選手たちが立ち上がるきっかけを作ってほしい」と訴える。
「私自身も怪我で野球を諦め、挫折を経験し自暴自棄になり、『野球なんてもういい』と思ったこともある。しかし、最後に希望の光を灯してくれたのが『野球』の2文字だった」と語った。
国難に立ち向かった世代として
これから学校の再開と共に、段階的に部活動も行われ、各校のグラウンドには再び球音が戻る日がやってくる。「高校球児たち。特に3年生は苦しいと思う。しかし、君たちには一緒に練習してきた仲間がいる。その仲間と自分、そして指導者が一体になって一致団結してほしい。まさに『ワンチーム』の精神です。ユニフォームを着られる人、ベンチ入りできない人、途中で辞めてしまった人などもいるであろう。しかし、そんなことは関係なく、今こそ日本全国の球児が一つの輪となり、甲子園を目指す過程でライバルや目の前の強敵と戦ってきた経験を存分に発揮すればウイルス収束への道が拓け、次第に君たちの未来も拓けてくるのではないだろうか」と問いかけた。
そして最後に渡辺さんは「君たちの先輩たちがしてもらったようにスタンドからの応援はない。しかし全国の方々が今、君たちを応援しているということを決して忘れないでほしい。全国の医療従事者やメッセージを発信してくれるアスリートの方々に感謝の思いで応え、君たちは見えない敵に立ち向かった世代として語り継がれ、また語り継ぐ役目を担っている」とエールを送った。
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